今年は本をたくさん読もう!おしゃれの本質を探るエッセイなどファッションのプロが熟読した3冊
誰しも人生の傍に本の存在があるのではないでしょうか。
時に新しい扉を開き、背中を押し、心を癒してくれることも。ファッションディレクターとして、数々のファッションブランドに携わる笠原安代さんに〝かけがえのない本〟を聞いてみました。
自分の力でものを勝ち得る女性たちの生き様に感動。
映画や音楽よりも本が一番身近な娯楽という本好きの笠原安代さん。長年、ファッション業界の第一線で活躍する笠原さんの選書は、いずれもファッションに関わる人生に影響を与えた本です。
「中学時代に夢中で読んだ『ベルサイユのばら』は、フランスという舞台、華やかな宮廷ファッション、すべてが知らないことばかりで新鮮でした。
印象に残ったのは、かっこいい女性像。誰かが幸せを運んでくれるのを待つのではなく、与えられた環境の中でもがきながらも、理想に向かって自分で人生を切り開いていく。わがままなお嬢さんだったマリー・アントワネットが、最終話では王妃としての尊厳をもって潔く断頭台に向かう成長した姿に、強さと美しさを感じました」
若さや新しさとは違う価値に勇気づけられて。
90年代前半、バイヤーサポート業務で駐在していたイタリアから帰国して読んだ『おしゃれの視線』は、おしゃれに新たな視点や気づきを与えた一冊。
「仕事柄、最新のトレンドを身に着けることがかっこよさ、と思っていたのですが、イタリア人のファッションは自分らしさを大切にする。白シャツ、紺ブレといった定番スタイルながらも、瞳の色とネクタイの他を合わせたりして、流行も年齢も関係なく、自分なりのこだわりでおしゃれを楽しみます。イタリアでそんなふうに感じたことを言語化してくれたのがこの本。自分らしいスタイルを作ることこそかっこいい、そういうおしゃれを目指そう、と思うきっかけでした」
リーダーとしての成長を後押ししてくれた。
『「原因」と「結果」の法則』を読んだのは、チーフバイヤーとして多くの店舗をまとめ上げる立場になった40代前半。
「哲学者ジェームズ・アレンの名著。当時、チームをひとつの方向に導く立場になり、リーダーとしてどうあるべきか悩んでいたときに尊敬する方にいただいて熟読した本です。人を羨むな、リーダーは静かに心穏やかにしていることが必要、希望は口にして形にするものだ、思いと人格はひとつである、といった名言が散りばめられていて、仕事の成長の助けになる言葉をたくさんもらいました」
PROFILE
笠原安代/かさはら・やすよ
大手百貨店に入社後、イタリア・ミラノに駐在。独立後もバイヤー、ファッションディレクターとして、数々のファッションブランドに携わる。2022年から(株)デサントの社外取締役。
『クウネル』2024年11月号掲載 写真/加藤新作、 編集・文/今井恵、矢沢美香
SHARE
『クウネル』NO.129掲載
素敵に年を重ねるためにしたいこと、やめること
- 発売日 : 2024年9月20日
- 価格 : 1000円 (税込)