自称・活字中毒!料理家・井澤由美子さんの「人生を変えた」3冊。旅には本とシャンパーニュとグラスを携えて

誰しも人生の傍に本の存在があるのではないでしょうか。時に新しい扉を開き、背中を押し、心を癒してくれることも。料理家の井澤由美子さんに〝かけがえのない本〟を聞いてみました。
楽しい絵と歌、音楽で、文字の世界を教えてくれた。
井澤由美子さんには、独特の旅のスタイルがあります。
「出かける前に、好きな本と季節のシャンパーニュ、ロブマイヤーの旅行用のグラスを、ホテルに発送しておくんです」旅先のホテルでゆっくり本を読むのが何より幸せな時間です。そんな井澤さんは月に4、5冊を並行読みする活字中毒。バスルームや寝室、もちろんキッチンにも。家のあちこちに本があります。
「たぶん幼少期に『おはなしコンサート』というレコード付きの絵本にハマり、そこが私の活字中毒の原点なんでしょう」。日本昔ばなしや外国の話、童話や神話が収録されていた絵本は、ボロボロになるまで読み倒していました。
「その頃から神話が大好きでしたから、それが今の郷土料理好きにもつながっているんでしょうね。この本が私の土台をつくってくれたと思うと、当時購入してくれた母や祖母に心から感謝しています」

5歳の頃に読んだ『おはなしコンサートⅠ』THE CONCERT OF FAIRY TALES
プロの声優の語りと音楽、歌で構成されるレコードを聴きながら、絵と文字も楽しめる絵本付きレコード。1にはシンデレラなど4話が収録。全12巻。童音社
抜群のセンスと味で、人生の扉を開いてくれた。
そして高校生の頃、人生に大きく関わる一冊の本に出合いました。
「ライフコーディネーターであるマーサ・スチュワートの本で、彼女が演出するガーデンウエディングの写真を見て、こういうのがやりたいんだと」

16歳の頃に読んだ『パイ&タルト』 マーサ・スチュワート 著
季節ごとのフルーツやナッツを使った、マーサ・スチュワートのパイとタルトのレシピが約100種。美しい写真とともに紹介されている。カインドウェア
テーブルセッティングやお花のアレンジ、テーブルの上に並んだケーキ。どれも井澤さんの理想の世界でした。
「『パイ&タルト』に掲載されていた“背高のっぽのレモンパイ”というパイは百回以上つくりました。そう、高校生の頃にケーキにハマりました」
料理のコツだけでなく、人が生きるコツの教えも。
子育てと飲食店の経営で息をつく間もなかった20代を過ぎ、30代では憧れのマーサと共に働くという夢も実現。それから料理家の道を歩み始めたのです。
「料理家になってからも読み返しているのが『日本料理こつのこつ』です」

23歳の頃に読んだ『日本料理 こつのこつ』 中谷文雄 著
味吉兆の中谷文雄さんが語りかけるような文体で「魚を炊く」「乾物を戻して炊く」など料理の基本とともに、調理場の風景が見えてくるような描写も。柴田書店
味吉兆の主人である著者が教える料理の基本が書かれた本ですが、「文章の中に人間が生きる上でのコツがさりげなく書いてあります。料理家としてひとりの人間として中谷さんの粋な文章が好きで、繰り返し読んでいます」。
PROFILE
井澤由美子/いざわ・ゆみこ
発酵食、中医学、薬膳に造詣が深く、栄養学を織り交ぜた食養生を提案。NHK「きょうの料理」や「あさイチ」で見せる、軽快なトークも人気。著書に『まいにち食薬養生帖』(リトルモア)
『クウネル』2024年11月号掲載 写真/加藤新作、 編集・文/今井恵、矢沢美香
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