登場したyoutubeは80万再生以上!マチュアが注目する82歳の暮らし【パリに暮らす日本人マダムvol.2】
日本でモデルして活躍した後、1973年10月に渡仏し、現在は娘の夫が創業したメゾン キツネ直営の「カフェ キツネルーブル」に勤務している石井庸子さん。長いパリ生活で培った自分流の賢い暮らし方について、ほか人生観やライフスタイル、日々の楽しみなどを伺いました。
フランス・パリに住んでいる日本の女性たち6名のライフスタイルを紹介する書籍『パリに暮らす日本人マダムの 「手放す幸せ」の見つけ方』(主婦と生活社)から紹介します。
目 次
フランス人マダムたちは年齢も、他人の目も気にしない
You Tubeでも暮らしぶりが紹介されている石井さんは、最近では、日本に一時帰国すると、講演を依頼されることもしばしば。
「日本の女性たちは、『私はもう歳だから』とか『いい歳して何してるんだろうって、人から妙に思われたりしないかしら』と、つい人の目を気にして冒険しなくなってしまう。けれど、フランスのマダムたちのように物怖じせずに、どんどん挑戦してみてくださいねってお話ししたら、『私も挑戦してみることにしたわ!』とすっきりした表情で帰られる方がたくさんいらっしゃるんですって。私って、日本の女性たちに勇気を与えてるのよ。なんていったって、私は82歳の元気なおばあちゃんなんだから」
そのライフスタイルとともに、パリのセンスで着こなす私服ファッションにも注目が集まっている石井さんは、「若い頃にショーや撮影でさまざまな服を着る経験ができたからこそ、自分に何が似合うのかがわかるようになった」と言います。
「たとえば、私にはヒラヒラのフリルや派手な花柄は似合わないし、いつも着る服の色はベージュ、茶色、白、グレー、黒。要するに、シンプルなのがいちばん。クローゼットの中もこれらの色合いで揃っているから、コーディネートに迷うことはありません。とはいえ、たとえ私には似合わない服でも、ほかの女性には似合うかもしれない。だから、自分にはどんな服がしっくりくるのか、ためらわずにどんどん試して欲しいですね」
ブランド品には特にこだわらず、好きな服を着る。髪にはスカーフかリボンを巻いて、シンプルなシャツかブラウスにベストやジャケットをさっと羽織り、ボトムスの多くは無地のパンツで、その足元にはメンズライクなレザーシューズを合わせる。 パンツのポケットに手を入れてパリの石畳を歩く姿はなんとも粋。
石井さんの生き方には"スタイル"がある。それが世代を問わず人気の理由です。
石井庸子/いしいようこ
日本でモデルとして活躍した後、1973年10月に渡仏。パリの左岸パンテオンの近くで21年間バーを営む。現在は娘のロミの夫、ジルダ・ロアエックが創業したブランド、メゾン キツネ直営の「カフェ キツネ ルーブル」に勤務。
オンとオフを切り替えた週日と週末の過ごし方
2007年に21年間営業していたバー「マイルーム」を閉めたあとは、16区のお弁当屋さんで6年半腕をふるい、石井さんが作るおふくろの味を求め毎日行列ができていたほど盛況でした。
「そのお弁当屋さんを辞めてからは、しばらく日本に行ったり、夫が住んでいるグアドループ(カリブ海にある島でフランスの海外県)に行ったりして過ごしました。でも、グアドループにずっと住み続けるのはやっぱり難しいと思って、3週間ほどでパリへまた戻ってきたんです。その後、娘のロミの夫でメゾン キツネの創始者、ジルダ・ロアエックから『メゾン キツネがバーゲンセールをするから、手伝いに来て』と頼まれて行って以来、そのまま自然と『カフェ キツネ』で働くという流れになったんですよ」
「カフェ キツネ ルーブル」で週4日間働く現在の石井さんの1日は、毎朝5時頃に起きて朝食を食べることから始まります。仕事は午後1時からなので、余裕を持って12時頃に自宅を出ます。
「私は持病もなくて元気だから、自宅から毎日バスで通勤しています。仕事は午後6時までです」
帰宅したら午後8時頃までテレビでニュースを観たりしてくつろいでか夕食の支度を。お味噌汁を作って、新カブなどの野菜を漬けたり、しめさばを作ったり。食後には自分で焼いたケーキとコーヒーか紅茶を飲んでから、お風呂へ。
「さっと浸かるだけですが、バスタブにはちゃんとお湯を張るようにしています。そのあとにまたいろいろとやり始めると、なんだかんだでベッドに入るのは夜0時過ぎ。だから、深夜0時や1時に『きっとまだ起きてるよね?』っていう LINEのメッセージが届くと、『もちろん!』ってすぐに返信するのよ。みんなに『歳を取ってるのに、よく遅くまで起きていられるね』とか、同年代の友達からは『朝方、つい早く目が覚めちゃったりしない?』などと言われるけれど、快眠でまったく問題なし」
平日は月曜日から木曜日までは仕事。金曜日はシーツを洗うと決めて、洗濯や掃除に励む日に。週末はvide-grenier(ヴィッド グルニエ)と呼ばれるブロカント(古物市)に行ったり、マルシェに買い物に出かけたり。日曜日にはラスパイユ大通りのビオ(無農薬) 専門のマルシェに行って、野菜や魚、卵、花などを買っています。
そんな石井さんの健康の秘訣は、「美味しいものが大好きだから、よく食べること」と。
「歳を取るとお肉が苦手になるってよく聞くけれど、私は週に1回はお肉屋さんで200g らいのフィレ肉をステーキ用にカットしてもらって、それをぺろりと食べちゃうんですよ」
引っ越しがもたらした“引き算”による居心地のいい空間
以前はパリの郊外に住んでいた石井さん、2年前にパリ市内の現在の場所に引っ越してきました。
「その当時住んでいたアパートを大家さんが売りに出すことになって。だから、とっても気に入っていた飾り棚や食器類もたくさんあったものの、『パリ市内のアパートは家具付きだから、もし棚を持って行ったとしても部屋が狭くなってしまうなぁ』と考えた末、残念ながら食器の多くは厳選して、棚とともに思い切って手放しました」
部屋の暖炉の上では、20年来コレクションし続けているアスティエ・ド・ヴィラットのベースに飾られたブーケや、お気に入りのアンティークオブジェが並んでいます。何が自分に似合うのか、どんなものがわが家にふさわしいのか――石井さん自身が、その答えを知っているのです。
好評発売中の本書では、このほかの魅力的な「パリに暮らす日本人マダムの暮らし」が
パリに暮らす日本人マダムの 「手放す幸せ」の見つけ方
本書では、フランス・パリに住んでいる日本の女性たち6名にご登場いただきます。みなさんに共通するのは、ご自身の仕事のキャリアによって、現在の立場を築いた方々ということ。どの方々も、長いパリ生活で培った自分流の賢い暮らし方を実践しています。人生観やライフスタイル、日々の楽しみなどを伺いました。
〈登場〉
石井庸子さん(「カフェ キツネ ルーブル」勤務)/佐々木ひろみさん(「MAISON N.H. PARIS」デザイナー)/弓シャローさん(アーティスト、デザイナー)/篠あゆみさん(フォトグラファー)/角田雪子さん(「TSUNODA PARIS」デザイナー)/大塚博美さん(ファッションコーディネーター)
『パリに暮らす日本人マダムの 「手放す幸せ」の見つけ方』(主婦と生活社)
smile editors編 128P、1,760円
『パリに暮らす日本人マダムの 「手放す幸せ」の見つけ方』(主婦と生活社)
smile editors編
128P、1,760円
撮影/YOLLIKO SAITO、 編集・執筆/ 原 正枝