18歳年上の女性と結婚したフランス男性の本音「彼女のお陰で同年代の友人より豊かな経験を積める」

25歳の年齢差があるフランス大統領夫妻が登場してから、フランスでは女性が年上のカップルが年々増えていると言われています。年齢差を乗り越えて結婚したファッショナブルな夫妻に、恋愛観・結婚観を聞きました。

18歳の年齢差があるからこそ、足りないところを補い合える。

バスティーユの自宅から車で出勤。「仕事もプライベートも一緒。ブーランジュリー(パンの店)やブシュリー(精肉店)を営む夫妻のようですね」(シルヴィさん)

良質なヴィンテージクローズを揃えるパリ10区の「サンクス・ゴッド・アイム・ア・ヴィップ」。ハイブランドの一点ものや、20世紀初期から現代までの希少価値の高いアイテムが見つかり、掘り出し物を探しに海外から訪れるファッショニスタも多いと言います。

店を営むのはシルヴィ・シャティニエさんとアマナイ・ナスさん夫妻。シルヴィさんは現在60歳、アマナイさんは42歳。18歳の年の差カップルです。

「この仕事を始めたのは彼と知り合うずっと前のこと。パリではなく、1994年に近郊のモントルイユに店を開きました。それと並行して18区のイベントホール、エリゼ・モンマルトルやマキシムなどで、店と同名のハウスミュージックのパーティのオーガナイズを始め、世界的に著名なDJを招き、毎回2000人以上が集まりました。フレンチ・タッチと呼ばれるフランスのハウスシーンが生まれたのはこのパーティで、新進のダフト・パンクなどが出演したことも。アマナイはそこにDJとして参加し、2004年に出会いました。でも、出会った頃はお互いのことを、恋愛対象としては意識していませんでした」(シルヴィさん)

「イベントオーガナイザーには男性が多いのですが、その世界で成功している女性がいると聞き、会う前から彼女に尊敬の念を抱いていましたし、惹かれていました。是非とも知り合いになりたいと思っていましたが、まさか妻になるとは」(アマナイさん)

交際が始まったのは2006年。シルヴィさんが彼に音楽の仕事を依頼したことがきっかけでした。 「モロッコでパーティを開いた際、そこでかける音楽のデモテープを彼に作ってもらったんです。それがとても良くて、参加した人が皆褒めてくれたの。モロッコから戻る前日に彼に電話してお礼を伝えました。パリに戻ってからはSMSを送りあって、それからずっと一緒にいます。何も計算せず、ナチュラルに付きあいが始まりました。前夫との間の娘が1人いて、彼と付き合ってもいいか彼女に聞いたところ、すんなりOKしてくれたので嬉しかった」(シルヴィさん)

3年の交際を経て2009年に結婚。その前年に10区の店をオープン。ヴィンテージ好きのシルヴィさんが洋服を買いすぎて家が手狭になり、この仕事を始めたのだとか。休日は買いつけのために旅をし、家や店の家具も古物市で揃えたもの。プライベートも仕事も常に一緒という2人ですが、年の差を感じることはあるのでしょうか。

アルバム写真

2022年にシルヴィさんの孫、アルチュールが誕生した際の写真。アマナイさんのアンサンブルは「メゾン・シャテニエ」。

1987年のシルヴィさんと娘のロリータさん。彼女も現在ショップのスタッフとして勤務。

カール・ラガーフェルドが2000年に撮影をしたシルヴィさんのポートレート。

「付き合い始めた頃は年齢差を感じましたが、今は感じません。彼が年下で良かった、と思うのは、デジタル系が得意なこと。独学で店のサイトの立ち上げ、デジタルカメラでの商品撮影、ネット通販の開設に加え、ラジオ番組の立ち上げ、店で流す映像の撮影や編集なども手がけています。私はその分野がまったくわからないので助かっています。彼はセンスが良く仕事をこなす能力も高い。他の人にオーダーをすると何度も修正をしなくてはいけませんが、彼なら安心して任せられます。年下のパートナーと一緒になった利点はたくさんありますよ」(シルヴィさん)

店の前で撮影。お揃いのブルゾンはパリのヴィンテージストアで購入したもの。/本人提供写真

彼女はパートナーであると同時に親友、同僚、そして支援者だとアマナイさん。「年上の女性と一緒になった長所は、人生経験が豊富で知性があり、生活でも仕事でも、僕を助けてくれる点。彼女が言うことは正しいと思えます。様々な企画を構築してきた彼女は素晴らしい人。自分には彼女が必要ですし彼女のいない人生は考えられません。今は同じ目的を持って多くのプロジェクトを進めていますが、彼女は有言実行の人で先延ばしをしない。同年代の友人を見ると、やりたいことはあるけどそのうち、とすぐに取り掛からない人が多いように感じます。彼女のお陰で、僕は同年代の友人より豊かな経験を積むことができました

インドのゴアでバカンスを過ごした際のワンショット。「シルヴィはゴアが大好き。30年来通っています」(アマナイさん)/本人提供写真

PROFILE

シルヴィ・シャティニエ/Sylvie Chateigner

フランス生まれ。1994年、パリ近郊にヴィンテージショップ『THANX GOD I’M A V.I.P.』を開店。同名のパーティオーガナイザーとして著名に。『Maison Chateigner』のデザイナーでもある。

アマナイ・ナス/Amnaye Nhas

モロッコ生まれ。1999年、17歳でパリに留学。DJ活動をしている際にシルヴィと出会い、2009年に結婚。2008年にはパリ10区に新店舗を共に立ち上げる。https://thanxgod.com/

『クウネル』2024年9月号掲載 写真/篠 あゆみ、取材・文/木戸美由紀、編集/吾妻枝里子

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『クウネル』NO.128掲載

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