毎日が文化祭。夫婦で営むドライフラワー専門店〈MUKUTOU〉の誕生秘話
夫婦で運営しているドライフラワー専門店〈MUKUTOU〉。2021年にオープンし、現在Instagramのフォロワーは2万人超え。店舗を持たないネット販売のみにも関わらず年間200件以上注文を受けているという話題のお店です。そんな人気の秘訣とご家族の暮らしを伺いに、埼玉・浦和にあるアトリエを訪ねました。
宮下恵介・菜実子/みやしたけいすけ・なみこ
埼玉・浦和にアトリエを構え、ウェディング用のオーダーメイドや、ギフト、インテリア用のドライフラワーをネット販売している。妻の菜実子さんが主にドライフラワーの制作を手掛け、夫の恵介さんが、受注や配送、SNSでの宣伝などを担当。
ものづくりの楽しさは母が教えてくれた
2021年にドライフラワー制作を始めたという宮下夫妻。きっかけはコロナによる生活の変化だったのだそう。
「前職はトリマーをしていたんですが、子供の幼稚園が休園した影響で、仕事をしながらの子育てが難しくなったんです。時間だけはあったので、それまでお手入れしていなかった植物を玄関に置いてみるなど、ステイホーム生活の気分転換として花と関わるようになりました」(菜実子さん)
実はドライフラワー制作は未経験。主にyoutubeを見ながら独学で方法を習得して行ったのだそう。
「縫い物をしていた母の影響か、元々手先は器用な方で、小さい頃からものを作ることが好きでした」と菜実子さん。みるみるうちにのめり込み、自宅がドライフラワーだらけになったといいます。
「市場で仕入れて生花から自分でドライフラワーを作るようになってからは、どんどん制作が楽しくなって。季節によって仕入れられる花が違ったり、ドライになっていく過程も見ながら日々試行錯誤しています」
一方、web関係の仕事をしていた恵介さん。もともとコンテンツを扱うノウハウは持っていたと言います。
「コロナ禍になる少し前に体調を崩して会社を休職していたこともあり、妻のドライフラワーをブログやSNSで紹介するというのが、体調面も時間的な面でもちょうどよかったんです。フリマアプリやイベントスペースなどでも販売したりしながら、軌道に乗り出したタイミングで本格的に夫婦の仕事にしようと決意しました」(恵介さん)
毎日が文化祭。夫婦で助け合いながら楽しむ
制作も宣伝も独学で、それまで未経験のことばかりの分野に飛び込んだ宮下夫婦。不思議と不安はなかったと言います。
「毎日が文化祭みたいなんです。思いついた時にすぐに夫婦で相談して、やりたいことやってみようって。行き当たりばったりなことも多いのですが、それも楽しい。全てが新しい経験です」(菜実子さん)
「このスタイルになってからよかったことは、子供の成長を近くで見守りながら仕事ができること。会社員時代は日中子供達と会話するなんてできなかったですから。子供も制作に興味を持ちはじめて、たまに一緒に作品作りしたり。新しいコミュニケーションが生まれたことも、嬉しい出来事ですね」(恵介さん)
今年1月からはアトリエを借りて制作。子供たちは「青いお家」と呼んで親しんでいるんだとか。
ドライフラワーをハンギングしてある制作部屋は湿度と温度を一定に。2階は夫・恵介さんの作業部屋と、子供たちの遊び場。「お気に入りのアンティークショップで少しずつ家具や花瓶を買い揃えています」(恵介さん)
家族でできることを、できる範囲で
あくまで家庭とのバランスは崩さない範囲で続けたいという宮下夫妻。
「妻は本当にアーティスト気質で。その日の気分によって作品を作るから、一つとして同じものがないんです。例えば、Instagramで30件近く問い合わせが来たブーケも、抽選で1人にしかお届けできない。僕はなるべくたくさんの人に届ける目線に立って、同じものたくさん作ったら?と聞いたりするんですが、嫌だって言われて(笑)妻の制作欲を損なわないように伺いながら提案してます(笑)」(恵介さん)
「やっぱり根底にある楽しさが無くなっちゃうと、続けられないかなって思うので。単純に作る量を増やして、人を雇ったらいいっていうものでもないと思うんです。夫婦でやっているという私たちの良さも失ってしまうと思うので、当分はこのやり方を貫きたいです」(菜実子さん)
最後に今後挑戦したいことを伺いました。
「今後はフォトスタジオとしてアトリエを貸し出したり、お花を使ったアートコーディネートなんかもやってみたいなと思います。それもこれも全部始めてのことばかりなんですけど、初めてを楽しみながらやっていけたらなって」(菜実子さん)
「日々相談しながら、妻のセンスを支えたいと思っています。大それた野望があるわけではないけれど、今後も子供たちとの時間を最優先に、バランスをとりながら夫婦二人三脚で楽しみたいと思います」(恵介さん)