一人暮らしの気ままな快適さと、外にも開かれた仕事場の機能があり合う家。住む人らしさを映すトーンを感じ、フロアの個性に興味惹かれて。家内製手工業人の肩書で、自身のブランド〈moss*〉で洋服作りをする石澤敬子さんのこだわりの一軒家にお邪魔しました。まずは1階部分から!
◎1st FLOOR
服作りに集中したり、ワークショップを拓ける流動性ある空間。
賑やかな商店街から少しそれると、住宅街になじんだ白い家があります。長年住んだ都心から実家の近く、川崎市内に戻ってきた石澤さん。「ここは昔家族で暮らした場所でした。母から家を建てては?とすすめられたんです。先々兄たちと地元で助け合って暮らしてほしいというのが母の願いですし、タイミングを感じ、駐車場だった土地に家を建てることに」
アートやデザインに造詣が深い石澤さん、理想の空間イメージを設計事務所の人に伝えるそうです。「バウハウスの世界観やル・コルビュジエの『小さな家』が念頭にあって。家自体はシンプルな箱がよかったんです。」会社に勤務しながら自らのブランドをもち「家内製手工業人」を自称する石澤さん、ものづくりの時間も大切にするために、空間の分け方、使い方を検討。
「1階をワークショップも開けるような外にも向いたアトリエにするのが、いちばんの課題。あとは完全プライベートフロアを上に作り、中間フロアでは人を招けるように考えました」。空箱を自分だけのセンスでデザインしていくのは、自由で楽しそう!?
「窓の形とか建材とか好みを貫きたくもありましたが、予算も考えスタンダードな規格で満足として、ただ要所要所ではこだわりましたね」
たとえばアトリエはバウハウスのデッサウ校舎のイメージで格子のガラス戸をオーダー、キッチンのキャビネットは特注で作ってもらうなど。3年前に完成。家の随所には買いためていたアンティークやアート作品などを置き、以前の家から家具も大切に使います。「コンテナをリメイクしてもらった家具以外、新しいものはないですね」。基本は無骨、メンズライクなインテリアに、階ごとの塩梅でガーリーな演出も加わって、独特の落ち着く雰囲気があります。
「古いもの好きの私。実は最初、新築の家で大丈夫?とも思ったのですが。好きな物に囲まれて暮らすと、だんだんに私らしさは深まってきた気がします。作業の部屋には篭る感覚があり、出勤前にベランダで珈琲タイムを取るといい切り替えもできます。その変化が生活に豊かさを加えて」。時とともに住人と部屋のハーモニーは、豊かさを増して行きそうです。
石澤敬子/いしざわけいこ
家内製手工業人。雑貨店等の販売職を経てミナペルホネンに勤務しながら自身のブランドmoss*でデザイン・製作活動を。おすすめクリエイターを自宅でのイベント主催で紹介。
『ku:nel』2021年7月号掲載
写真 伊藤徹也 / 取材・文 原 千香子
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