江戸時代から6代続く農家「お米農家やまざき」に嫁いだ山﨑瑞弥さんは名うての料理上手。夫の宏さんと切り盛りする台所の主役は、もちろん自慢のお米です。最高においしそうな食卓を朝昼晩と見せていただきました。つやつやご飯とおかずがずらり並ぶ情景に、胃袋が刺激されてしまいます。
「お米っていいな」と
思われるように研究・発信
一回3合、多いときは朝昼晩で計9合。お米農家・山﨑さん宅で、毎日お米を炊く量です。そして、ご飯が進むおかずをたっぷり並べとにかく豊かな食卓です。食べ盛りの小学生のお子さん2人がいるとしてもかなりの量。
「農家の仕事は天候次第。待ったなしの作業で立て込むこともしばしば。そんなときは、もっとおかずが少なかったりレトルトを使ったりも。でもご飯は絶対に炊く。しっかりお米さえ食べておけばパワーがつくし、さびしい思いをしないと信じて……」
太陽とにらめっこしながら、農薬も化学肥料も使わず、手塩にかけて自分たちで作ったお米。おいしさはひとしおです。炊くスタイルはいろいろ。圧力鍋、土鍋、鋳物鍋……。たくさんの「炊飯鍋コレクション」から、その日の気分でチョイスします。それぞれにクセがあり、炊き上がりも少しずつ変化。浸水、火にかける時間、蒸らし加減などの研究を重ねている山㟢さん夫婦。今回少量でもおいしく炊けるコツをうかがったところ、何度も試して最良の炊飯を探ってくれました。
「お米のことは、やはり聞かれることが多いので検証します。糖質を控えようという風潮もありますが、それを『時代だからしょうがない』とあきらめるのではなく、自分たちができることをやっていこうと思います。一人でも多くの方にお米っておいしい!と思っていただけたら嬉しいです!」
話している間に、お米が炊き上がりました。菜の花とディルを入れて混ぜご飯にします。これは、ご飯に混ぜて子どもたちに野菜を無理なくたっぷり食べてもらいたいという工夫から。夫婦で手際よく調理をし、彩り豊かなおかずが食卓に並べられていきます。最後はテーブルの真ん中に、木のボウルにたっぷり盛った混ぜご飯をどーんと。ほかほか湯気を上げる光景は幸福感に満ちていて、どのおかずよりも存在感大。炊きたてご飯は「何よりのごちそう」とあらためて思うのでした。
山﨑瑞弥/やまざきみずや
農薬、化学肥料不使用のお米「ひなたの粒」を販売。夫婦で提案するレシピ本『お米やま家のまんぷくごはん』(主婦と生活社)も好評。http://www.okome-yamazaki.com
『ku:nel』2019年5月号掲載
写真 石黒美穂子 / 取材・文 鈴木麻子