クリエイティブディレクターのインテリア。大きな家具はあえて木製以外の素材をチョイス【住まいの履歴】

各界著名人の気になるお住まいを拝見。これまで住んできた家のお話も合わせてお聞きする「住まいの履歴」。今回はクリエイティブディレクター長尾悦美さんのお住まいです。
時代や国を超えて。ジャンルレスな美が宿る住まい。

多様なデザインのチェアの中に、黒の1脚を差し込んで引き締め役に。セカンドハンドで購入した〈イケア〉のテーブルのスタイリッシュさもアクセント。
フリーランスのクリエイティブディレクターとして、パリやNYを中心に、国内外を飛び回る長尾悦美さん。出張も多く、家を離れている時間が長いからこそ、住まいへの思いは一層強くなっていったと話します。

空間に映える中国のアンティークチェスト。
「東京で初めて住んだのは目黒の八雲エリア。〝街の空気がいいな〟と感じて決めました。忙しい毎日だから、家は完全にオフになれる時間にしたくて。以来、引っ越しの際は街の雰囲気や周りの環境を大切にしています。コロナ禍の大半を過ごした前の住まいは、大きな窓が印象的な多面採光の部屋。梅の木や百日紅、雪が降ったら一面、雪景色を楽しめて、窓辺がまるでアートのよう。美しい借景が好きでした」

キッチンには、国内外で集めた民藝品や器たちがまるでショールームのように並ぶ。「民藝品はきちんと用の美を意識しながら、アートのような感覚でも楽しんでいます」
今の住まいは抜群の日当たりとユニークな間取りが特徴的。大きな窓とキッチンが気に入って即決したそう。ジャンルや年代にとらわれない、自由な視点のもの選びはさすがです。

リビングはロースタイルで開放的な印象。〈リーン・ロゼ〉の名作ソファは、ピンク色とアートのような柄ものを2個使い。手前のワンシーターは、40周年限定のジャカード生地。
「ヨーロッパやアメリカなどの暮らしのインスピレーションを受けながら、テイストをミックスさせて、日本の住宅事情にも合うよう自分なりにアレンジしています。プリミティブなものやクラフト感のあるものを取り入れつつ、大きな家具にはあえて木製以外の素材を選んで、それぞれが引き立つように引き算で整えるのがマイルール。例えば、壁掛けのアートも数を絞るなど、効果的に取り入れるようにしています。また、アンティークショップや蚤の市などで〝流行ではないもの〟を見つけ、どんなふうに空間に合わせていくのか。インスピレーション源を探すという行為が好きなんです」

造り付けの棚はベニヤ板だった棚板をDIYでグリーンに。好きなものや本を無造作に並べて。
住まい年表
●~30代前半 北海道で暮らす
北海道・帯広出身。18歳で札幌へ。セレクトショップスタッフとして、忙しく過ごす。自然がそばにある暮らしが原体験に。

●30代前半~現在 東京へ移住
転勤を機に上京。街の雰囲気や借景の美しさなど心地よさを重視した家選び。海外の暮らしに学んだセンスが際立つ住まい。

PROFILE
長尾悦美/ながお・よしみ
クリエイティブディレクター
セレクトショップスタッフ、髙島屋のバイヤー兼クリエイティブディレクターを経て独立。現在はフリーランスで、商品の買い付けやショップビジュアルのディレクション、コンセプターなど、幅広く活動中。Instagram:@yoshiminagao
『クウネル』2025年9月号掲載 写真/川村恵理 、取材・文/ 阿部里歩
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