沢野ひとしさん・苦しくない、私の片づけ作戦4/「ものを捨てるのは心が痛む」がいつまでも抱えている方が心が澱む

住まいを整える イラストエッセイ 沢野ひとし

片づけと人の人生を見つめたエッセイが人気の沢野さん。すっきり整ったアトリエから、片づけが苦手な人たちに知恵をご伝授。
沢野ひとしさん・苦しくない、私の片づけ作戦3/押し入れのプラスチックの収納ケースは敵?からの続きです。

「見えるところから始める」

パリの彼の影響を受けて、それからというもの「余分なものを置かない」と朝の10分間チェックを半ば強制的に行うことにした。またそれを習慣化することに成功した。

実践してみると確かに、片づいた空間は落ち着け、くつろげる。「明窓浄几」という言葉があるが、机の周りに余分なものを置かないと仕事も捗る。当座必要のないものはその度に視野から外れたところに整理することにしている。

住まいを整える イラストエッセイ 沢野ひとし

光が入り、風も渡る家に住めば人間に変化が。

さらに窓辺にも何も置かず、「気」が絶えず流れるようにしている。前は旅行先で買った人形や鉛筆立てを置いていたが、窓ガラスを拭く時に邪魔になるので、ひとまず「おもちゃ入れ」の段ボールに収めた。「ものを捨てるのは心が痛む」。でもいつまでも抱えている方が心が澱む。

住まいを整える イラストエッセイ 沢野ひとし

テントでは快適に安全に過ごせるよう、必ず整理するはず。日頃からそうすればいいはず。

明るい春の訪れがことのほか嬉しいように、これを機会に今後使われないものは、思い切って手放した方が幸せになれる。暮らしをコンパクトにすると、気持ちも軽やかになれる。そして考えると「10分間片づけ」で気軽に手を動かすことが苦痛にならない。

中には「もっと片づけなければ」と亡くなった後のことまで、くよくよ心配している人がいる。宇野千代さんがある本の中で「死んだ後のことは、死んでから考えれば良いと思います」と書いておられたが、正にそのとおりである。今後もおおらかに生きたいものです。

住まいを整える イラストエッセイ 沢野ひとし

家をさっぱりしたら体感もさっぱり。帽子を変えるように住まいに新しい季節を……。

PROFILE

沢野ひとし

沢野ひとし/さわの・ひとし

イラストレーター・エッセイスト・絵本作家

1944年生まれ。『本の雑誌』創刊の1976年から表紙や本文イラストを担当するほか本、雑誌の挿画、山岳エッセイ等々広いジャンルで活躍を続ける。整理整頓の行き届いたアトリエを訪問した編集者の依頼で、片づけの悲喜こもごもと人生、人間を考察し書いた『ジジイの片づけ』が大きく反響を呼び版を重ねている。『ジジイの台所』『ジジイの文房具』とシリーズで出版が続く。

沢野さん著書『ジジイの片づけ』

ジジイの片づけ』(集英社クリエイティブ)

『クウネル』2025年5月号掲載 文・イラスト/沢野ひとし、編集/原 千香子、プロフィール写真/渡辺達生

SHARE

『クウネル』NO.132掲載

住まいを整えて、人生をリセットする

  • 発売日 : 2025年3月19日
  • 価格 : 1000 (税込)

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)