心地よくいられる色に囲まれた、ハワイの自然を大切にする暮らしーアーティスト 山崎美弥子さん【住まいと暮らしvol.70】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の飯田尚子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、アーティストの山崎美弥子さん。

山崎さんの暮らしのルール

1)自然の流れを感じる
2)ないものではなく、あるものを見る
3)いつも夢を見る

ハワイの小さな離島で、美しいグラデーションの作品を生み出すアーティストの山崎さん。もともと東京で生まれ育ち、自然とは無縁の生活だったのだとか。

「20代後半の頃、ある夜ヤシの木と青空のコントラストのビジョンが消えないことに気がつきました。そのときからハワイに通うようになり、何かに導かれるように30代で太平洋で船上生活をはじめ、この島にたどり着いたんです」

庭に置いたガーデンチェアに座って楽しむ、サンセットタイムがお気に入り。「水平線がラベンダーとピンクに染まります」

インテリアで一番こだわっているのは、素材感と色だといいます。

「わざわざ新しいものを購入するのではなく、既にあるものや誰かが使い終わったものをうまく工夫するように。心地よく感じられるものだけを置いて、人工的な素材感や、彩度の高い色の家具や雑貨を置かないようにしています。本も装丁はもちろん、書かれていることがエネルギーとして室内空間に影響すると感じるので、注意を払っています」

花瓶を置いて花を飾ったり読書をするとき、コーヒーを横に置くときに使っている子ども用の椅子。「今年20歳と17歳になった娘たちが、小さい頃に使っていたもの。いまでも大切に使っています」

自然の流れを感じることを大切にしていると話す山崎さん。

「たとえば、家の中にいる時間と、庭で裸足で歩き回る時間の配分。特に電子機器を使う時間が長くなったときは、その分、芝生に寝転ぶ時間を増やします。シャワーもできるだけ庭でホースを使い、頭のてっぺんから水をかぶることも。

洗濯物は木の幹にロープをくくりつけて干して。「高い丘には遮るものがなく、まるで海に浮かんだ船のように、島の風がいっそう強く吹き抜けます。乾燥しているので、洗濯物はすぐに乾いてしまいます」

生活の土台となる土に対してどうしたら優しくなれるかをいつも考え、そこに息づく植物や昆虫、小動物などが幸せな磁場を作れるようサポートしたいと思っています」

「長女が7歳の頃、友人から贈られた2頭の馬。そのうちの1頭は生まれたばかりの赤ちゃんでした。娘たちは馬と一緒に育ち、敷地内で乗馬を楽しんでいます」

ハワイの暮らしで気に入っているのは、人々に今も宿る“アロハのこころ”だそう。

「この島の女神が吹かせていると伝えられる風を、いつも感じることができます。

小さなキッチンをリノベーション。窓の位置を奥に伸ばしたそう。「以前はなかった、庭へ階段で降りられるドアもつけました。スペースを有効活用するため、フライパンや鍋は天井からぶら下げています」

古代のハワイアンの人たちは、土地とは人間が所有できるものではなく、生きている間ご縁がある土地をお世話させていただくものであると考えてきたそう。東京で生まれ育った私にはわからない感覚でしたが、20年ここで暮らして、ようやくわかりかけてきたところです。次の世代へバトンタッチするまでの間、大切にしていきたいと思っています」

ガレージセールで、魅力的なプリントのヴィンテージのアロハシャツを見つけると買うようにしているそう。「似合いそうな人を見つけてプレゼントしたり、リメイクしてクッションを作ったりしています」

ラナイ(ベランダ)だった部分に窓をはめて、新しいリビングスペースに。「窓もリサイクルの素材を見つけて再利用。水平線の美しい風景が見えますが、午前中は朝日が眩しすぎるので、コレクションしたヴィンテージのレースカーテンをぶら下げて。うたた寝をしたり、ゆっくりリラックスしながら考え事をしたいときに使っている空間です」

リビングルームの一部に小さなカフェコーナーを。「ラナイに設置した、大きなダイニングテーブルは8人座れますが、ここでは就寝前に書き物をしたり、一人でちょっとホッとしたいときにちょうどいい。娘と向かい合わせに座り、笑い話をすることもあります」

娘さんたちの机を借りて、絵画作品を整理。「勉強机にふさわしくない電気スタンドも、ガレージセールで見つけたもの。ショッピングモールはもちろん、インテリアショップもない島なので、手に入るものを工夫して生活しています。窓の向こうには馬のキャム」

スイミングプールは、組み立てキットで作ったもの。「大人も泳げるサイズ。プールの水の反射が家の天井に光る、そのゆらめきが大好きです。通り雨が来ると、水平線から虹が生まれます。向こう側に見えるのは、ラナイ島とマウイ島」

娘さんたちが小さかった頃の写真。「木の枝がガーデンテーブルの上にビーチパラソルのように覆いかぶさり、木陰を作ってくれるように工夫して枝を切っています。日差しが眩しい日も、このテーブルでランチを食べたり、読書をしています」

ガスストーブのオーブンで焼いたチョコレートケーキ。「お祝いの日には、庭中から積んできた花で飾りつけ。ハワイの伝統的なラウハウのランチョンマットを敷いて。さまざまなサイズのラウハウを生活の中で使っていて、大きなものは床に敷いています」

山崎さんお気に入りのデザート。「庭で育てたバナナの木から収穫した、完熟バナナを凍らせたものをココナッツミルクと一緒にミキサーで回すだけ。オーガニックのいちごをちょっと添えると、自然の甘みがとてもおいしいアイスクリームになります」

作品を空輸するときは、島の小さなお店からもらってきた空き箱や、庭に生えているハワイの在来種ハウの木のハート型の葉を飾りにして梱包。「この日は香り高い、舌切草の花も添えました」

一階のアトリエで描いた、海と空の絵の裏側にサインをして。「今から、タイトルとサインが描かれる小さなキャンバスが積み重なっています」

島の人たちが不要なものを庭先に並べて週末に販売する、ガレージセールやヤードセールが大好きだという山崎さん。「ハワイで暮らし、ハワイアンの女性たちを描き続けている、ペギー・ホッパーのドローイングがデザインされた、白いマグカップは掘り出し物のひとつ。お気に入りです」

ヤードセールで見つけた日用品の一部。「もともと高価なものでも、日常的に使っています」

珊瑚や貝、真珠など、海から生まれた宝物で作られたジュエリーが大好きだそう。「母から贈られたものや、ハワイアンの職人さんが手がけたものなど、大切に集めています」

山崎さんが東京で生活していた頃に集めていたもの。「マリア像や、今では珍しいテープレコーダー、卓上時計などのコレクションを海の宝物と一緒に並べてみました」

たくさんのペットと暮らす山崎さん。「ここに写っているのは、猫のカリキと、ダックスフント&チワワミックスのピーナッツ。どちらも島人から贈られた大切な家族。現在はカリキは天国に行ってしまい、代わりに黒犬のククイがいます」

profile

山崎美弥子/やまざきみやこ

アーティスト。1969年東京生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。東京を拠点に国内外で作品を発表する。2004年より太平洋で船上生活を始め、現在はハワイの小さな離島で、1000年後の未来の風景をカンバスに描き続けている。
instagram@miyakoyamazaki

ロコ(地元)のハワイアンミュージシャンが、パートナーと共に長い間暮らしていた家に暮らす山崎さん。「彼はここを天国131番地と名付けて、この家をテーマに楽曲をたくさん残しました」

山崎さんがバトンを渡すのは、ハワイ・オアフ島でセレクトショップ「at Dawn」のデザイナー兼オーナー・Eriko Trimbleさん。「Erikoさんのおしゃれなお店に、今年から私の絵画作品も並んでいます。最近都心部から、自然の多いエリアに移住したばかりの彼女の暮らしが気になります」と山崎さん。Erikoさんの暮らしは、4月下旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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