建築家・中村好文さん作の挿花家の家。天然素材、五右衛門風呂が楽しい小屋のような家です【住まいの履歴】

各界著名人の気になるお住まいを拝見。これまで住んできた家のお話も合わせてお聞きする「住まいの履歴」。今回は花教室「日々花」を主宰の雨宮ゆかさんのお住まいです。

十年以上かけてたどり着いた最高で最良の小屋。

「裏の畑でおいもをとって、薪を割ってお風呂を沸かします」。これは花教室を主宰する雨宮ゆかさん、写真家・秀也さんの日常です。そんなことを聞くと、どんな古民家、田舎暮らしをしているのかしら?と思いますが、二人が暮らすのは都心からそう遠くない東京郊外。十数年前に新築した木の家です。

床は無塗装。あたたかい季節は素足でいるのが気持ちよい。「小屋のような」シンプルな家を目指した。窓の外は、花の専門家・ゆかさんが四季折々に草花を育てている。

決まるまでは、ゆうに10年。「日課のように」物件チェックをし、百軒近くを検討したといいます。そうこうしているうちに、友人の建築家・中村好文さんに設計をお願いできることになりました。「中村さんに頼めるなら、細かい内容は特に決めずにお任せすることにしようとなったんです」

予算も限られているし、あまり希望を出すことはできないだろうと思っていたけれど、「五右衛門風呂がいいなあ」といったのは秀也さん。「子どものころ、少しの期間だけ薪風呂を使ったことがあったんです」。炎を見ながら過ごす時間は、なんだかわくわくしたと話します。「五右衛門風呂の家」となったら、住宅の密集地は候補から外れ、自然が近いこの場所にたどり着いたのです。

土間の突き当りに五右衛門風呂の焚き場が。担当はもっぱら秀也さんで、お湯が沸くまでの間、ここで本を読んだりチビチビお酒を飲んだり、余白の時間を楽しむ。

「お任せして」できた家は、土間があり、木の床、塗り壁の自然素材の家。家の顔ともいえる木の台所ですが、天板は輪島の漆職人・赤木明登さん作で、棚は「四十沢(あいざわ)木材工芸」が担当しました。暮らしを重ねるうち、台所も床もいい味わいが出てきました。

ゆるやかな階段を上がった2階には寝室が。「限られた予算だったので平屋かな?と思っていたら、2階があったので夫婦で驚きました」

「寒くなってくるとお風呂用の薪の減りは早いし、庭や畑の仕事に終わりはない。すごく家に『働かされて』いる気がします。大変だなあとは思うけど、苦しくはない。だって、昔の人の生活ってきっとこんな感じだったでしょう?」

玄関の先は土間の廊下が。採れた野菜や、ときには花材も置けて便利。

台所と反対側の壁は夫の撮影スタジオに。この日は椿とニンドウが生けられていた。

住まい年表

幼少時代 横浜の家

育った家は古い日本家屋。同居していた祖母は、庭で花を育て飾るような人だった。「あの家で過ごし見ていたことが、私の原点にあるかも」

 

20代後半〜40代半ば 仮暮らしのアパート

親の介護などの事情で、「とりあえず」と住んだアパート。早々に次の家探しを始めるも、なかなか見つからず10年以上をここで過ごした。

PROFILE

雨宮ゆか/あめみや・ゆか

花教室「日々花」を主宰。植物と暮らしの関わりを主に、雑誌、本などで活動中。各地で植物に関するワークショップも行う。身近で親しみやすい花、葉、実を紹介した著書『百花帖』、『百葉帖』、『百実帖』(すべてエクスナレッジ)などがある。

『クウネル』2025年3月号掲載 写真/雨宮秀也、取材・文/鈴木麻子

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『クウネル』NO.131掲載

パリ・東京おしゃれスナップ187

  • 発売日 : 2025年1月20日
  • 価格 : 1080 (税込)

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