壁に色を取り入れ、もっと自由に楽しむ暮らしーカラープランナー・小林明子さん【住まいと暮らしvol.65】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の伊藤菜衣子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、カラープランナーの小林明子さんです。

小林さんの暮らしのルール

1)暮らしに置くものは、できるだけ受け継いだり使い続けていくための工夫をする
2)働くことと暮らしをゆるやかにつなげて楽しむ
3)衣食住のどれも素材を楽しみ、おもしろがる

オリジナルペイントの開発、色と質感の提案から施工まで行う「COAT」の代表、カラープランナーの小林さん。5ヶ月前に鎌倉の築30年の平屋に引っ越ししてきました。

「友人に紹介された物件でした。賃貸に出された後も大切に住まれてきたことが感じられ、美しく経年変化をした様子に心惹かれました。

和室の読書コーナーには、友人の手がけた作品を飾って。「ギャラリー気分で、部屋のいたるところに作品を飾るのが楽しい。作品によって壁の色を変えるのも楽しい。壁が自由だと暮らしも自由になります」

入居する前、壁紙を張り替えるタイミングで大家さんに提案し、壁紙からペイントにチェンジ。色や質感については、大家さんとお話しながら決めていきました。もともとよい素材で作られていて、職人さんの手仕事の丁寧さを感じられる家だからこそ、メンテナンスをすれば新しく息を吹き返すと思ったんです」

玄関正面の壁にかけた、「COAT」オリジナルのペインテッドパネル。「サイズ、イメージからオリジナルで制作。シャープなイメージにユーモアを足して、というオーダーでデコラティブペインター ヤマグチに制作を依頼しました。夜になるとボヤッと光る仕掛けが」

住宅や建物のリノベーションなどの仕事で、大切にされてきたものを受け継ぐことに長く携わってきたという小林さん。

「家の壁や天井、床といった表面、家具や小物もペイントすることで長く使い続けられます。

これまでの仕事を暮らしに落とし込み、賃貸でも壁を自由にできれば、暮らしももっと自由になります。工夫してトライして、暮らしにフィットさせる住まい方を実践中。自分のものさしで心地よいと感じる今の暮らしは、一番フィットしています」

大家さんの庭では、レモンやみょうが、柚子やハーブが育ち、一緒に収穫したり、お裾分けしてもらったりしているそう。

自宅の庭には小さな畑があり、友人から株分けしてもらったハーブを植えて。

「ハーブや花、草などを摘み取って飾っています。雑草もかわいくてとても元気。祖父母が農家だったので、おすそ分けいただき、庭仕事の話をしたりするのが、実家の生活にも近いと感じられ、自分らしい楽しみ方につながっています。旬のものを食す楽しみが、日常にあることがとても嬉しい日々です」

旅先で購入したり頂いた、スパイスとはちみつ。「10年前にインドで購入したスパイスボックスには、普段よく使うものを入れて。はちみつは非加熱で、その土地の個性を感じられるものが好み。朝と夜にひとスプーン摂ることで、免疫効果があると感じています」

日常に香りが欠かせないという小林さん。「色を作ることと香りのブレンドは似ていると感じます。香りのブレンドをすることがリフレッシュに。ハーブで入浴剤や石鹸を作ったりしています」

友人で、ベルリンで活動する「aoiro air design」の香り。「この香りをまとうことで、1日がスタートします」

友人の「余地 yoti」さんが手がけた掛け軸。「引っ越しの際、床の間の佇まいにひと目ぼれ。イメージを伝えて制作を依頼しました。yotiさんの作品はどれも、温かさのなかに凛とした空気が漂っています」

壁は自由にペイント。「手さばきが表情となり、柔らかい質感になるペイントを採用。色のバランスを考えて調色したくすんだ白です」

ダイニングの奥まったスペースには、レコードプレイヤーやアンプを収納。自宅作業スペースとしても活用しているそう。

パートナーの両親が大切にしていた、YAMAHAのスピーカー。「半世紀のときを経て、友人で照明プランナーの「ombre」さんが修復してくれて、音を出すことができました。”当時、家で鳴っていた温かい時間ごと再生しているよう”と表現してくれ、とてもうれしかったです」

空間の色と質感の感じ方には、光がとても重要だという小林さん。「ombreさんに照明計画をお願いしました。すべて見えるよりも、見えない部分、影があることが心地よいと感じられます」

器は好きなギャラリーやお店で、少しずつ集めてきたもの。「大切なものほどよく使います。見た目も楽しく、自然と丁寧に盛り付けができ、よりおいしいと感じます。野菜は実家や友人の畑で採れたものが中心。作っている人の愛情が伝わるから、より丁寧に食べようと思えます」

引っ越しした際、玄関用にオーダーしたリース。「よい感じに褪せた色合いも美しいです」

大のお気に入りだという自転車。「自転車マニアの友人が組んでくれたもの。自分でハンドルやサドルを変えたり、少しずつ乗りやすいようにアレンジして、自転車愛が高まりました」

大画面で映画を観るのは、小林さんの楽しみのひとつ。スクリーンは自立型で屋外でも使用可能。

「makita」のインパクト、プチ工具セット、「COAT COLOR BOOK」は、何かを作りたくなったときの必須アイテム。

ガーデン用の古くなったテーブルも自らペイント。「色を変えることで気分転換ができます。それまでと違う使い方ができるのが楽しい」

色のバランスを考え、調色しているところ。「陰影が美しい白は、家具やインテリアを引き立ててくれます」

profile

小林明子/こばやしあきこ

大学卒業後、インテリア商社勤務。その後、専門学校で建築、インテリアコーディネートを学ぶ。京都での染色実習で染めの世界の美しさに触れ、日本古来の色や素材に惹かれ、色や質感のある素材に興味を持つように。建築の分野で内装中心に、色彩提案、素材の販売、オリジナルペイントの開発から施工を行う「COAT」代表。カラープランナーとして活動する。
Instagram@acco_at
www.coat-color.com

小林さんがバトンを渡すのは、料理家で「ties」を主宰する遠藤千恵さん。「千恵さんの作る料理は、ハッとするアイデアや盛り付けの美しさ、おいしさはもちろん、食材も生き生きと喜んでいるように感じます。生産者さんのところに足を運び、その土地の人や野菜と会話して、ひとつのお皿に乗るまでのストーリーごとおいしく、身体が元気になる料理に何度も感動してきました。千恵さんの暮らし、食、地域との関わり合いが楽しみです」と小林さん。遠藤さんの暮らしは、11月中旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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