温熱環境や家事動線を考え、暮らしのストレスを少なくー暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子さん【住まいと暮らしvol.64】

美しいものは次の使い手が必ずいると考える伊藤さん。少しずつ名作家具を集めているそう。「孫などがいつか、豊かな暮らしかたの一部を引き継いでくれたらいいなと、何十年か先を妄想するのもいいものです」

吉村和美さんの作品。「器はいろいろと試しましたが、今はレパートリーを減らし、同じ作家さんのものを買い増すのが好き。吉村さんの器は、年々増えていく色を楽しんでいます」

鰹節、梅干し、酵素シロップなどが入った保存瓶が並ぶキッチン。「大きな食洗機やオーブンとのコントラストが、わが家らしいなと思います」

キッチンの一角。「角田淳さんの陶器の美しい照明、棕櫚の箒、桐ダンスをリメイクした食器棚、夫のコーヒーマシン。私たちの価値観の上下左右への振り幅の広さがよくわかる場所かもしれません」

ある日の食事。「食材の素晴らしさに頼り、焼いて調味料をパラっとかけるだけ。この日は隣町の敬愛する『徳八農園』さんの野菜と、夫が作ったフムスとサラダが前菜です」

庭でいろいろなハーブや野菜を育てているそう。「タイム、ミント、フェンネル、フォーズマリー、コブみかん、マイクロトマト、茗荷。焼くだけ、塩を振るだけがベースの料理に、変化が加わります」

 

ご主人はコロナ禍、雑誌の特集で好きな店のレシピが公開されたのをきっかけに、キッチンによく立つようになったそう。

友人や子どもたちの作品、家族写真などを飾る壁。「作品の入れ替え途中の様子。今の気分は、下條ユリさんの『戦争なんてクソ喰らえ』です」

 

スマートホームは必需品。「子どもの習い事や、お迎えのリマインドをしてくれたり、スマート電球Hueと連動させ、自分たちの寝る時間の1時間前から照明が徐々に暗くなるなど、タイムキーパーとしてなくてはならない生活の相棒です」

 

「事務所スペースも含んでいるのに91㎡と小さな家なので、お風呂、トイレ、洗面所は一体にすることで省スペース。子育てをしていると、おむつを変えたりするのにもシームレスで広々していて、使いやすい間取りだと感じます」

 

洗濯はドラム式洗濯機で乾燥までかけることがほとんど。家族の洗濯物を混ぜずに、それぞれの洗濯バスケットから、それぞれが洗濯するスタイルに。「私も夫もアメリカでホームステイしたことがあり、みんなの分を誰か1人がまとめて洗濯しなくてもいい、という価値観を持っていたから行き着いた形です」

 

ウォークスルークローゼットには、洗濯機が設置され、洗う、干す、しまうが一箇所で完結。「階段の手すりは、物干しコーナーとしても活躍。来客時に慌てて片付けるのは言うまでもありません」

寝室は、ベッドが窓と壁にぴったりついたレイアウトに。「断熱等級6、トリプルガラスの樹脂サッシを採用したことで、窓際も壁際も暑さと寒さを感じることがありません。照明は柳宗理さんの一番大きなAKARIによって、おおらかな空間になっています」

住宅は性能面にもこだわり、断熱等級6、耐震等級3に。「エネルギーをどれくらい使う家にするのか自覚することは、これからとても大切。あとは暮らしの中の寒さ・暑さを我慢するために(無自覚に)忍耐力を使うのではなく、社会に使った方が未来のためになるんじゃないかな、と考えます」

 

夏の冷房は14畳エアコン1台、冬の暖房はこれに加えて床暖房を朝晩に30分程度で、家中が快適に。「高断熱住宅については、編著『あたらしい家づくりの教科書』をぜひ」

家の庭にDIYで作ったというコーヒースタンド「Coffee.TO.______」。「『本当はコーヒーで生きていきたかった』と何かと口にしていた、コーヒーへの情熱が暑苦しい夫へのプレゼントのようなもの(笑)。人生は一度きり。好きなことをやれば良いと思います」

 

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の安斎明子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、「暮 ...[続きを読む]

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