【私のこれから】ふたつの拠点を持つことが、 私の人生のバランスを取ってくれています

室井滋さんが座っている

東京と故郷の富山を行き来しながら、人気の個性派俳優として、 また作家として活躍している室井滋さんが語る二拠点ライフとは?

学生のときの映画デビュー以来、 数十年。独自の存在感で、さまざまな役柄を演じるベテラン女優の室井滋さんですが、作家、エッセイストとしての活躍もご存知の通り。日々の 発見、おかしな日常をつづった『むかつくぜ!』や自身の子供時代を描いた絵本『しげちゃん』などのベストセラ ーを生み出してきました。

言ってみれば、二足のわらじ。

「最初のころは女優だけでは食べていけなかったし、書くことは生活のためだったけれど、驚くほど反響があって。 一番大変だったときは、3、4誌に連載を掛け持ち、芝居の仕事も忙しく、板を渡してお風呂でも原稿を書いていたくらい」

寝る時間を惜しんででも書くことをやめなかったのは、それが大好きだから。女優と文筆、どちらかで煮詰まったときも、もう片方の仕事が気持ちを支えてくれました。

もうひとつ、室井さんが二足のわらじにしているのは、東京と故郷・富山のふたつの居場所です。地元の高校を卒業して、早稲田大学に入学したころは「ここは好きじゃない。早く富山を出なくては」と思ったけれど、なにし ろ大きな商売をしていた家の10代目の跡取り。父は亡くなり、ひとりっ子だから家とお墓を守るのは室井さんの仕事になりました。

やむなく帰省し、家を建て直して、地元の友人たちと旧交を温めると、「魚は死ぬほどおいしいし、 人も面白いし、こんなにいいところだったんだ、と改めて感じて」。

若き日にはわからなかった地域の良さが大人になって理解できるようになったのです。ラジオのレギュラーや地域の広報活動など、富山での仕事も増えていって、現在でも月に2、3回は富山に帰省。仕事をこなし、友人たちと会い、充実した時間を過ごしています。

「女優と書くことと一緒で、ふたつの拠点を持つことが私には合っていると思います。それぞれの場所に違う仲間がいて、うまくバランスが取れているということなのかな」

軽やかなフットワークと根っからの働き者のパワー、それが室井さんの二拠点ライフの基盤。生き生きとした好奇心で生きることを楽しむ姿勢、参考になりそうです。

『クウネル』2022年9月号掲載

取材・文/舩山直子

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