別府が2024年世界の旅行先トレンド1位に!レトロモダンな“別府温泉”で過ごす、癒しの湯治体験

あるトラベルサイトの調べでは、2024世界のトラベラーが狙う観光地の第1位がBEPPU(別府)だそう!日本人はもちろんのこと、海外の観光客へもその魅力がじわじわと伝わりつつある注目の観光地、大分県・別府。

いわゆる別府温泉とは、浜脇・別府・観海寺・堀田・明礬・鉄輪・柴石・亀川の8つの温泉郷からなる“別府八湯”のこと。山から海へと広がる扇状地の地形が特徴で、さまざまな泉質の湯がこのエリアに集まっています。湧き出る源泉の数は世界一。古来より、別府八湯を巡って体を癒す湯治の文化が今も息づいています。

今回は、別府八湯の「鉄輪(かんなわ)温泉」と「明礬(みょうばん)温泉」を訪ね、評判の温泉パワーにふれるとともに、この地の文化である湯治を体験してきました。

レトロモダンな湯治宿で、ヘルシーな地獄蒸しを堪能

別府で体験できる“湯治”は、驚くほどにおしゃれ。今回お世話になった鉄輪温泉の宿『湯治柳屋』は、明治時代に建てられた湯治宿を現在の女将が引き継ぎモダンにリノベーション。建物に囲まれた中庭には、名物「地獄蒸し」を調理する台所(釜)がそのままに鎮座しています。

明治時代の湯治屋を活かした建物は、美しい陰影を生み出しています。

和のインテリアを活かした客室。

柳屋のお湯は源泉かけ流しで、泉質は肌当たりがまろやかなナトリウム塩化物泉。天然の保湿成分であるメタケイ酸を豊富に含んでいるので、美肌効果大!体の芯から温め、湯冷めしにくいのも特徴です。

造形作家・望月通陽さんがデザインした暖簾が目を引く玄関。

柳屋の隣にあるカフェ&シフォンケーキ店『サリーガーデン』&ギャラリー『アルテノイエ』。買ったシフォンケーキは店頭の地獄釜で蒸して食べることができます。

地獄蒸しとは、温泉の地熱(蒸気)を使って食材を蒸し上げる、別府温泉郷ならではの調理法。宿泊客は滞在中、自ら食材を調達し、釜を使って自由に調理します。長期滞在する湯治客の理に適った自炊法です。

柳屋の地獄釜。約100度の蒸気が噴き出す釜に、ざるに盛った食材を入れて蓋をするだけ。

温泉の蒸気だけで調理するので、とことんヘルシー。温泉成分に含まれる塩気が食材にほんのりと移り、食材そのものの旨みがギュッと閉じ込められています。

蒸し時間の目安も分かりやすく書かれているので、安心しておいしく仕上がります。

飲泉も可能。まろやかな塩気と口当たりは、お出汁を飲んでいるかのよう。

蒸しあがった地獄蒸しを囲んで乾杯。湯治客からお裾分けしていただいた落花生が、とっても美味でした。

朝ごはんは地獄蒸しのせいろで。ふっかふかのパンが忘れられず、翌日『友永パン屋』で買ったパンを地獄蒸ししていただきました。

湯治 柳屋

住:大分県別府市鉄輪井田2組 鉄輪銀座通り
公式HP

好みの泉質を見つけて、はしごするのがツウの湯治法

鉄輪温泉郷には大小さまざまな入浴施設があり、数メートル隣でも泉質が異なるのが特徴。ツウは、体調やお湯の好みで温泉を何箇所もはしごするのだとか。朝、宿の周辺を散歩していると、頭にタオルを巻き、洗面器を片手に路地を歩く人を何度か見かけました。昔から変わらない風景がここにはあります。

住民から長く愛されている共同浴場『すじ湯温泉』。入浴料100円でどなたでも利用可能。

さまざな効能があるハーブ、石菖を敷き詰めた蒸し風呂『鉄輪むし湯』も宿の近くに。

『鉄輪むし湯』の外には、膝まで入れてあったまる足湯ならぬ足蒸しも。体の芯まで十分温まります。無料。

ミルキーブルーの柔らかなお湯がやみつきに

続いて、山の中腹にある明礬(みょうばん)温泉のお湯を体験。鉄輪温泉とは目と鼻の先にありながら泉質はまったく異なると聞き、ちょっぴり興奮。

伺ったのは、評判のお湯を持つ老舗旅館『岡本屋』。通常は宿泊客のみが利用できる温泉を、今回特別に体験させていただきました。青磁にも例えられる、空の色がお湯に溶け込んだかのような乳白色のお湯はシリカ成分の湯の花が浮かび、とろりとしてとっても柔らか。硫黄成分やメタケイ酸が多く含まれた酸性湯のため、古い角質を剥がしてくれ、美肌効果も期待。

ただ、酸性湯の長時間の入浴は禁物。明礬の湯にさっと浸かって汚れや角質を落とし、鉄輪の湯で美肌ケアしつつ、体の芯から温まるコースがおすすめだとか。

表面に浮いているのは湯の花。このミルキーブルーのお湯に浸かる幸せといったら……。

インテリアも素敵な『岡本屋』。女将・岩瀬伸子さんのセンスにうっとり。

忘れてはならないのが、『岡本屋』の名物・地獄蒸しプリン。ミルクの風味がしっかりめでカラメルはほろ苦い、大人向けの味わい。

岡本屋

大分県別府市明礬4組
公式HP

「はあ〜」と一息つきながら 体を整える。別府温泉発の入浴剤

薬効・美肌・保温効果など魅力たっぷりな別府の湯。温泉に浸かり、体を養生する湯治文化は、残念ながら現代は薄れつつあります。改めて湯治を考え、現代に湯治文化を根付かせたいという想いから生まれたのが、湯治をコンセプトにしたライフスタイルブランド『HAA(ハー)』。

『HAA』をつくったのは、別府出身で現在は東京と別府の二拠点で活動する池田佳乃子さん。心と体を癒す湯治体験を自宅でも再現できるようにと、天然の湯の花を原料に、とろりとしたお湯を完成させました。

入浴剤〈HAA for bath〉の開発には、この地域のみに残る「湯の花職人」の存在が大きいと池田さんは話します。

湯の花が作られる“湯の花小屋”。国指定の重要無形民族文化財にも指定される唯一無二の製法が、ここに生きています。

別府の湯の花は、温泉から汲み上げるのではなく、茅葺きと藁でできた“湯の花小屋”の中で作られます。小屋の中に敷き詰められた青粘土と地下から沸き立つ温泉の蒸気とが反応して結晶化したものが、いわゆる“湯の花”。夏は40度、冬は30度で60〜70日かけて育て上げます。

江戸時代から続く湯の花作りを今に継承する、湯の花職人の草牧信彦さん(右)。「いつか私も湯の花職人に」と、湯の花作りへの熱い想いを持つ『HAA』の池田佳乃子さん(左)。

草牧さんが丹念に育てた温泉の結晶。採取した湯の花から不純物を取り除き、ゆっくりと時間をかけながら湯の花エキスを精製・抽出。さらに、熟成させることで強酸性から刺激の少ないアルカリ性に変化させて『HAA』の入浴剤が出来上がります。

この湯の花を原料にして生まれたのがバス専用の入浴剤〈HAA for bath〉。本来、硫黄成分を含む湯の花は風呂釜を痛めることもあるので使用は慎重になりますが、『HAA』は別府湯の効能を残しながら硫黄成分を抜き取っているので、自宅で気軽に使えるのが嬉しい。

「都会の日常の中でも、はあ〜っと深呼吸をして、湯治のような心身の養生ができたら……という想いで作りました。ギフトにもしやすいよう、パッケージにもこだわって。心と体のリフレッシュを、大切な人にもお裾分けできるように」(池田さん)

「大切な人へ贈りたい気持ち」をテーマに選べるセット。中身は同じで、包み紙にはそれぞれ異なるエッセイがしたためられています。写真のセットのテーマは「ささやかな愛」。5個入3,300円。

HAA

別府市内に繰り出し、 ショッピング&食べ歩き

湯治体験の合間には、別府市内でも人気の北浜エリアにショッピングへ!

セレクトショップ『SPICA』は、別府を訪ねたら立ち寄りたかったお店。竹スプーンやタオルなどのオリジナル商品から、人気作家の器、全国から取り寄せた焼菓子まで、センスの良いアイテムが豊富に揃っています。

HAAの入浴剤も取り扱いがありました。小箱入りはプチギフトにも。3個入1,540円

滅多にお目にかかれない人気作家、亀田大介さん・亀田文さん夫妻の作品も。美しいフォルムの白磁に目を奪われました。

SPICAオリジナルの竹のカレースプーン。平たい形がユニーク。

SPICA

住:大分県別府市立田町1-34
公式HP

大正5年から続く、地元のパン屋さん『友永パン屋』。一番人気のあんパンやバターフランスを買い込み、地獄釜で蒸し上げたら大正解でした。

平日でも列ができていることも。入り口で注文表を受け取り、並んでいる間に記入します。

北浜商店街の入り口に40年以上前からあるというジェラート屋『ジェノバ』。オープン当初、ジェラートはかなり珍しかったのでは。散策のお供にぴったり!

友永パン屋

住:大分県別府市千代町2-29
公式HP

冷乳菓工房 ジェノバ

住:大分県別府市北浜1-10-5
公式HP

鉄輪、明礬と湯治を体験した3日間。別府エリアの中でもさまざまな泉質があることを知り、自分に合ったお湯を見つけた時の、幸福感。お湯に浸かりながら、はあ〜と深呼吸すると、自然と心と体が癒されていくのを実感しました。そして、湯上がりの肌はピカピカ!ヘルシーな地獄蒸しを食べ尽くしても体が軽く、とにかく元気に過ごすことができました。世界からも注目される別府の温泉パワーを、ぜひ体験あれ!

取材・文/神保亜紀子

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