今、島旅が大人気!絶景とともに大自然の息吹を感じる「隠岐諸島」3日間の旅
ここ数年、日本の離島を旅する「島旅」が人気です。最近では、海外から“アイランドホッピング”する観光客も増えているそう。離島に注目が高まっている中、今年隠岐ユネスコ世界ジオパーク認定 10 周年を迎えた日本海の離島、隠岐諸島を訪ねました。600 万年もの時を刻んだ火山由来の大地、寺社に今も伝 わる伝説、そして豊かな海の幸など、隠岐諸島の底知れぬ魅力に触れた3日間の旅をご紹介します。
目 次
島根県・隠岐諸島へは、羽田空港から伊丹空港経由で、隠岐ジオパーク空港に到着。乗り継ぎもスムーズで、離島=遠いというイメージが払拭されるほど、あっという間の隠岐入りです。空港があるのは、4島 からなる隠岐諸島で一番大きな島の「島後(どうご)」。
ちなみに、ほかの3島をまとめて「島前(どうぜん)」と呼び、中ノ島、知夫里島、⻄ノ島とそれぞれ島の名称がありますが、「島後」にはなぜか島の名前がないそうです。名無しの島...、これぞ隠岐ミステリー。
“神々に近い島”を実感する神社参拝からスタート(島後)
島後で最初に訪れたのは、島にある150の神社のうち、総社である『玉若酢命神社』。創建は 871年で、主祭神はタマワカスノミコト。注目は本殿の造りです。出雲大社、春日大社、伊勢神宮の建築様式を 組み合わせた「隠岐造り」という、珍しい様式を見ることができます。
隠岐島といえば、かつての後鳥羽上皇、後醍醐天皇が配流された地として知られますが、じつは御所(京都)からみて吉方位に位置し、鮑などの海産物や黒曜石が採れ、水が豊かな土地だったことから、こういった由緒ある神社が島の各地に数多く残っています。神馬や相撲などの神事とともに神社を代々大切にしている島⺠の心意気も知ることができました。
奇岩に夕日が灯る「ローソク島」遊覧(島後)
お詣りの後は、島後で一番の景勝地「ローソク島」のサンセットを見るため、遊覧船に乗船。ごつごつした奇岩が林立する海上で、とりわけ異彩を放つのが約 20メートルの高さの奇岩「ローソク島」。先端に夕日が重なった時ローソクに火が灯したような絶景を見られる、人気の観光スポットです。 その時を見逃すまいと気合いは十分。が、この日は雲がやや多く……、それでも火が灯ったほんの一瞬を見逃しませんでした!
海の幸、地酒。“ご島地”グルメに舌鼓(隠岐の島町)
島後での宿泊は、海の幸が何もかもおいしかった『羽衣荘』。隠岐の名物・岩牡蠣をはじめ、白バイ貝やイシダイのお造り、隠岐牛のロースト、白バイ貝の炊き込みご飯、シャキシャキとした食感に目を丸くしたもずく。また、地酒の飲み比べから、人生初の海藻焼酎など、島自慢のグルメにとことん舌鼓。
羽衣荘
住:島根県隠岐郡隠岐の島町都万 2213
電:0120-313-397(受付時間 9:00〜18:00)
https://okiplaza-hagoromo.com
600万年前の地球の姿 赤く染まった「赤壁」(知夫里島)
翌朝はフェリー「しらしま」に乗り、島前(どうぜん)へ移動。アイランドホッピングのスタートです。 まずは隠岐諸島でもっとも小さな島、知夫里島(ちぶりじま)に上陸。知夫里島で一番高い場所「赤ハゲ山展 望所」を目指します。
起伏のある牧草地が広がり、放牧された牛たちがおいしそうに牧草をむしゃむしゃ。のどかな牧草地を上り切ると、知夫里島のてっぺん「赤ハゲ山展望所」に到着。
火山の噴火活動でできた証である独特のカルデラ地形と穏やかな内海のコントラスト、カルデラ地形を覆う牧草地の広がる風景を360度見渡しながら、大地からの息遣いが聞こえてきそうでした。
さらに、知夫里島のもう一つの見どころは、国の名勝天然記念物に指定されている「赤壁(せきへき)」です。赤ハゲ山の駐車場から遊歩道を5分ほど歩くと、眼前に高さ約200メートル、約1キロにわたって荒々しく削り取られた断崖が!赤く染まったむき出しの地層は、気の遠くなる時の積み重ねが生み出した、まさに自然の絶景です。
古⺠家の隠れ家レストランで 本格フレンチを(知夫村)
知夫里島(知夫村)でのランチは、フレンチレストラン『Chez SAWA』でいただきました。案内されたのは、看板もない(というか、見つからない)一軒家。隠岐でフレンチがいただけるなんて、と半信半疑でしたが、結果は、お店の佇まいと合わせてランチメニュー全6品すべてに心を奪われまし た。
フランス仕込みの腕を持つシェフが自家ファームで育てた野菜や朝釣ってきた魚などで生み出すメニュー はどれも趣向が凝らされ繊細。特に、デザートでいただいた〈紫蘇のソルベ〉は、これを目的に再訪したいと思ったほど。
Chez SAWA
住:島根県隠岐郡知夫村仁夫 2293
電:050-8885-0767
休:不定休
隠岐憧れの宿 『Entô』に宿泊(海士町)
Chez SAWAを後にし、内航船で約 20分の中ノ島へ。隠岐島旅 2日目の宿は、楽しみにしていた中ノ島・ 海士町(あまちょう)の宿『Entô』です。
今回宿泊したのは2021年にリニューアルオープンした新棟Annex NESTのお部屋。木目調の落ち着いたインテリアが素敵で、コットンガーゼのパジャマは着心地が良すぎてお土産に買って帰ったほど。
「海を眺めるときの煎茶」を飲みながら窓辺で一服したり、部屋でゆっくり過ごすのもオツというもの。
館内には温泉、ライブラリー、さらに、島の成り立ちや歴史を解説したギャラリー(分かりやすく、おしゃれ!)までが揃っています。『Entô』の目の前はフェリーや内航船が発着する港という好ロケーション。ここを起点に連泊しながらアイランドホッピングを楽しむのも良さそう!
Entô
住:島根県隠岐郡海士町大字福井 1375-1
隠岐のハイライト! 「摩天崖」トレッキング(⻄ノ島)
隠岐島旅の最終日は、中ノ島からフェリーで約10分、島前・⻄ノ島へ。
放牧された牛と馬にあいさつしながら牧草地をぐんぐんと上り切ったところに、大絶壁の「摩天崖(まてんがい)」はありました。眼前に広がるのは...、まるで地球そのもの! 一番高いところで海抜257メートル。崖の高さとしては日本有数の高さを誇り、さまざまな海岸浸食地形を見ることができます。真っ⻘な海からは想像もつかない荒波と、その波によって侵食された奇岩や地層。もともとは本州と陸続きだったという果てしない地球の記憶に想いを馳せながら、あらためて大自然のパワーを実感。
国賀海岸を右手に見ながら牧草地を下っていくと、アーチ状の岩「通天橋(つうてんきょう)」が見えて きます。先ほどの摩天崖は、もう見上げる位置にまで下っており、海岸に現れたいくつもの奇岩が波に打たれる光景も圧巻。隠岐諸島のハイライトといえる絶景の数々が待ち受けていました。 摩天崖から通天橋までは遊歩道が整備されているので、30分ほどのトレッキングは、隠岐旅には欠かせません。
旅の締めくくりは、イカの伝説を持つ神秘的な古社(島後)
帰路、空港のある島後に戻ってきました。時間のない中、旅仲間みんなで「寄りたい!」と訪れたのは、「由良比女神社」。なんでもこの神社にはイカにまつわる伝説があるそうで、神社前の浜には体⻑1メートルにもなるイカの大群が流れ着くそう。隠岐ミステリーここにもあり。
隠岐の食をいただき、隠岐の空気を吸い、隠岐の絶景に息を呑んだ3日間。島間の船の往来は、本数も多いせいか乗船時間も苦にならず、船に乗り慣れない私にとってもアイランドホッピングは快適で楽ちんでした。 小さな島々に、とてつもなく大きな自然のパワーが宿っていると感じずにはいられなかった隠岐島旅。私にとっても特別な場所となりました。
隠岐ユネスコ世界ジオパーク10周年サイト
取材・文/神保亜紀子