色とりどりのおかずとごはんを箱に詰めて……。私たちが愛してやまない「お弁当」ですが、ここ数年パリでも「BENTO」として人気を博しているようです。レストランのイートインが制限されているいま、益々その存在感は増しているようで……。
厳しいロックダウンから1年。未だに多くの規制がかかっているフランスでは、飲食店が閉鎖中。(3月半ば現在)但し、イートインはNGでもテイクアウトはOK。ということで、さまざまなカフェやレストランが「お持ち帰りメニュー」を始め、配達システムを導入するお店も一気に増えました。そんな中、BOXにごはんとおかずがぎゅっと詰まった「日本式のお弁当」は、パリでも存在感を放っています。
パリ7区で評判のフレンチレストラン「Le Gentil」では、昨年6月からお弁当( 18€ )をスタート。テイクアウトは初めてという同店の、気になるその中身は…フレンチではなく、中華や和風のお惣菜メニュー。ステーキ、鮭の味噌漬け、麻婆茄子、チンジャオロース、コロッケなどなど、味もボリュームも大満足のごはんが進むラインアップです。
「おかずがごはんに合うことは絶対!です」と笑顔を見せるオーナーシェフ・熊谷文敏さん。もちろんフランス料理店としてフレンチのメニューも考えたそうですが、「温め方や盛り付けといった再現の難しさ」「買った状態でそのままおいしく食べられること」を前提に熟考した結果、今のスタイルにしたのだとか。当初は大きな炊飯器がないことやおかずのバランス、できたてを提供するタイミングなど、フレンチのノウハウとは違うお弁当作りに試行錯誤だったそうですが、おいしさは口コミで広がり、今ではフランス人のリピーターも多い予約必至の「BENTO」です。
レストランが期間限定でテイクアウトを行う一方、もともとパリには”日本の味”を提供する、たくさんのお弁当屋さんがあります。オープン8年目を迎えるパリ10区の人気店「mussubï」は、「目にも楽しく彩り豊かにさまざまな味をバランスよく」がコンセプト。「フランスのみなさまが食べてほっとするお弁当を目指しています」という同店の思いはしっかり届き、その味を求めて、連日訪れるお客さんの9割がフランス人だそう。
また、Pop-Up展開で注目される「Iné」は、きんぴらや味噌仕立ての野菜と選べるメインがBOXに詰まったお弁当( 14€ )。やさしい味わいとおしゃれなビジュアルで、 ファッション関係者の SNSを賑わせています。「Mussubi」 「Iné」ともにヴィーガン対応のメニューもスタンバイ。専門店の「BENTO」は、多様な食文化のニーズに応える柔軟性の高さも魅力です。
デパートなどの食器や雑貨コーナーには「LUNCH BOX」だけでなく、フランス製の「BENTO BOX」も登場。密閉タイプの蓋や機能性、巾着袋に日本のお弁当箱を感じ、ちょっと誇らしい気持ちになります。ちなみに近年「BENTO」という言葉が広がったのは、和食ブームに加えて、アニメや漫画の影響もあるとか。真偽のほどは不明ですが、日本の食文化がフランスで受け入れられているのはうれしい限り。そして今の私にとっても「プロが作るいろんな和の味を一度に楽しめる」のは贅沢なことなのです。