エッセイスト・広瀬裕子さんの京都の楽しみ方。桜の季節、年に一度の『都をどり』祇園の芸妓さんの美を見つけに

〈プレミアム・メンバー〉の広瀬裕子さんが、春の京都へお出かけしてきました。目的は、『都をどり』を観に行くこと。『都をどり』は、「いちげん(一見)さんお断り」という言葉がある京都の花街で、普段は会うことができない芸妓・舞妓総勢約50名の華麗な舞を、劇場形式で気軽に観ることができる公演です。
さくらの季節、京都へ行く喜び
何度、訪れたか分からない京都。この春。さくらの季節に行ってきました。目的は「都をどり」。春に祇園で開かれる芸妓さん舞妓さんの舞台です。

祇園甲部歌舞練場
京都にはじめて行ったのは、確か、10歳頃だったと思います。それから幾度も訪れていますが、多くの人がそうであるように、最初は神社仏閣、美術館、京料理と、京都らしい場に足を運んでいました。それが、大人と呼ばれる年代になってからは「あそこへ。ここへ」よりは「すきな場所へ何度も」に変化しました。

歌舞練場の敷地内にはつなぎ団子の提灯
歴史の長い都をどり
すきに加えて、憧れを抱く。それが、今回、お目当ての「都をどり」です。東京・新橋での「東をどり」を観たことがきっかけで、今年151回目を迎えるという歴史ある都をどりを1度、観てみたいと思っていました。

都をどりをお知らせするポスター
普段、芸妓さんや舞妓さんに接点を持たないわたしが、舞を観られるのはこういった機会だけです。1年に1度。それもさくらが咲く季節。こころ躍るのは致し方ありません。

華やかな緞帳
年を重ねてわかる、舞の美しさの背景にある努力
舞台は──「うつくしい」のひと言でした。10代後半の舞妓さんは初々しくかわいいらしいですし、芸妓さんはしなやかなうつくしさ。その方たち80名(1 公演 50 名の出演)が舞う様は、春の空に羽を広げる蝶のようでした。うつくしさの象徴でもある白い肌と艶やかな黒髪、紅。京都の、日本の、共通するうつくしさが、そこにありました。
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令和7年公演より(第1景 置歌)/画像提供・祇園甲部歌舞会
でも──その華やかさの背景には、日々の練習や毎日のつみ重ねがあるからです。歌舞伎を観る際も同じ思いを抱きます。やはり、その時間あってこそのうつくしさ。その、ひとりひとりの思いや過程を想像した上で目にする景色は、齢を重ねるに従い、深く感じ入るものがあります。
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令和7年公演より(第7景 妙満寺雪見座敷)/画像提供・祇園甲部歌舞会
さくらの季節がめぐりくる度「こうしてさくらが見られるのも」と思い馳せるように、都をどりにも様々な思いを重ねます。それが、一層、舞台の華やかさを印象づけてくれるのです。

大ざらえ(公開リハーサル前)の囲み取材/画像提供・祇園甲部歌舞会
多くの場所をめぐる京都の旅も楽しいですが「すき」や「憧れ」に絞った旅は、歳を重ねた大人旅に合う気がします。特にいま京都は外国からの旅の方たちで混雑しているので、欲張らないスケジュールがいいようです。移動に時間をかけるより「すきな場所」「憧れのもの」を決めて訪れる。
都をどりは、春中(4月中)つづきます。
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第百五十一回公演「都をどり」
会期:~4月30日(水)※15日は休演
会場:祇園甲部歌舞練場
(京都市東山区祇園町南側570-2)
観覧料:茶券付一等観覧席:7,000 円、一等観覧席 6,000 円、二等観覧席 4,000 円
公式HP:https://miyako-odori.jp/

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この記事の
プレミアムメンバー

広瀬裕子
執筆のかたわら、50歳から空間設計の仕事をはじめ、現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどのディレクション、フードアドバイス等にも携わる。著書に『60歳からあたらしい私』(扶桑社)など多数。
Instagram:@yukohirose19