世界中から予約殺到!セルジュ・ゲンズブールの暮らした家が一般公開。貴重な資料も多数

パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISの主宰・荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしをご紹介。今月は荻野さんが、1991年に亡くなったフランスの人気俳優セルジュ・ゲンズブールの暮らした家を公開している美術館のレポートしてくれました。

フランスのスター、セルジュ・ゲンズブールの家を一般公開

Rue de Verneuil 5 bis。パリ7区のヴェルヌイユ通り5番地bis、この住所を聞いてピンとくる人は、クウネルSALONのマチュア世代に多いかもしれません。

ここは、かのセルジュ・ゲンズブールが1969年から逝去する1991年まで、ずっと暮らした2階建ての小さな家。セルジュが雑誌やテレビのインタビューを自宅で受けることを好んだことから、この家のリビングやキッチン、浴室など、彼の暮らしぶりを当時から知る人も多く、特にファンにとってこの家はセルジュそのもの、といった象徴的な存在。そのためか、彼が亡くなって以来、家の塀は世界中のファンたちが書き残していった、思い思いのメッセージ(という名の落書き)でいつもあふれています。

閑静なヴェルヌイユ通りで異彩を放つ落書きだらけの壁はゲンズブールの家のシンボル。音声ガイドのヘッドホンはがっちりかぶるタイプ。

そんなアイコニックなセルジュの家が、所有者である愛娘シャルロット・ゲンズブールの意向によって、ついに2023年9月に一般公開されることとなりました。家をじっくりと見学できるようにと、10分おきに2名ずつ入ることができるシステムのため、1日に来場できるのはたった48組となり、オンライン予約は争奪戦。現在も12月まで全日完売で、来年以降の予約開始をメアド登録して待つのみ・・・という状況になっています。

私もなかなかチケットが取れず、前回の予約開始直後にすぐさま予約して、6月末にようやく初めてメゾン・ゲンズブールに足を踏み入れることができました。没後33年でも、人気アーティストのライブ予約と全く同じ状況になっている半端ない人気ぶりにつくづく驚かされます。

美術館は細長い通路の左右に展示が。奥にはアルバムジャケットでおなじみの、あのキャベツ頭が!

音声ガイダンスの声はなんと!

見学当日は10分前に、まずはゲンズブール美術館&ショップのあるヴェルヌイユ通り14番地に集合。そこでチケットを見せて音声ガイドの機材(スマホのようなもの)とヘッドホンを受け取り、5番地bisへと向かいます。このとき、美術館もそのまま見学できるよう手にスタンプを押してもらいます。ゲンズブールの膨大な資料が展示されている美術館は人数限定制ではないので、気軽にオンライン予約して見学できます。

ショップのポストカード。2人が着ているLee Cooperのデニムシャツはショップでも販売しているし、オンラインショップでも購入可。

私は1人だったので同じ時間帯にいらしたソロ見学の方とペアになり、ヘッドホンを頭につけて、いざ家の中へ。音声ガイドは英語とフランス語が選べるのですが、なんとシャルロット・ゲンズブール本人の声が!!耳元でささやくシャルロットの声に誘われるように、リビング、キッチンそして2階の書斎や浴室へと進んでいきます。

見学中は撮影・録音が一切禁止されているので、とにかくじっくりと、隅から隅まで自分の目に焼き付けるように部屋の中を見渡します。2人ずつの見学なので、本当にゆったりと視界も遮られることなく楽しめるのが最高です。

ゲンズブールの成績表。のちに大スターとなる人の子供時代が分かって興味深い。

クセのある手書き文字ですぐにバルドーだ!と分かった手紙。「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」発禁についての訴えが。

シャルロットが語るこの家での思い出話に、自然と涙が溢れてきました。高校生の頃からセルジュ・ゲンズブールの音楽に触れ、この自宅でポーズを取っている写真を何度となく見てきた私にとって、この家は懐かしい場所でもあり、初めて訪れる夢のような場所でもあり、今まで体験したことのない不思議な感覚を味わいました。

これから見学されるための方に、どんな内容が語られたかは伏せておきますが、どの部屋からもセルジュの面影を感じることができ、そしてシャルロットが娘という立場で紡ぐ言葉が優しく、切なく響いてくる時間でした。メディアではあまり見ることのなかったセルジュの寝室も見ることができ、ファン冥利に尽きました。シャルロット、本当にありがとう。

大量の資料が展示されている美術館も

家の見学が終わったら、14番地に戻り音声ガイドとヘッドホンを返却します。そして向かって左隣にある美術館の入口で、手のスタンプを見せて入場。ここには、ゲンズブールが生まれてから亡くなるまでの彼の人となりを知ることができる、450点以上もの資料が展示されています。

写真撮影OKですので、今回は美術館の写真を掲載しています。子供時代の成績表やブリジット・バルドーからの手紙、スタジオの請求書、自分の記事が掲載された新聞や雑誌の切り抜き、旅先で見つけたオブジェ、そして愛用していたジャケットなど、その量に圧倒されます。ゲンズブールは愛着のあるものをきちんと保管するタイプの人だったんだな、とここでもまた彼の知らない側面を見られたようでうれしくなりました。

日本のポスターや雑誌もいくつか。ゲンズブール本人が保管していたのだとしたら、なんだか感激。

おなじみのペンシルストライプの黒ジャケット!ポートベローのマーケットでたった2ポンドで買った女性ものだと分かりびっくり。

通路の右側はすべて動画での展示。若きジェーンと幼いシャルロットがかわいい・・・

公式サイトでは「Musée seul(美術館のみ見学)」と「Maison & Musée(メゾン&美術館)」の2タイプのチケットがあり、美術館のみは翌日の予約も空きがあるほど取りやすいです。メゾン&美術館は先ほども書いた通り今年いっぱいは完売。来年以降の予約開始はメール登録してお知らせを待つことになります。

シャルロットのファンなら何度も目にしたことのあるセルジュ作の肖像画。ボールペンで描いた愛娘の姿に胸を打たれる。

このキッチン、さっき見てきた!!!と感動が新たになる。

展示の後半は特設スペースになっていて、私が訪れたときは一大センセーションを巻き起こした「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」の世界各国のレコードが集められていた。

メゾン・ゲンズブールのトートバッグ 19.95ユーロ。切りっぱなしの感じもかっこいい。

INFORMATION

Maison Gainsbourg

住:rue de Verneuil 5 bis 75007 Paris
料金:メゾン&美術館:29ユーロ、美術館のみ:12ユーロ(7〜25歳 6ユーロ)
予約ページ:https://www.maisongainsbourg.fr/en/ticketing
オンラインショップ:https://boutique.maisongainsbourg.fr/en/

取材・文/荻野雅代

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トリコロル・パリ

荻野雅代さんと桜井道子さんのユニット。パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISを主宰。最新ニュースやカルチャー、旅行・観光情報をはじめ、さまざまな情報を発信している。初のエッセイ『フランスの小さくて温かな暮らし365日~大切なことに気づかせてくれる日々のヒント』(自由国民社)は6万5000部のヒットに。
https://tricolorparis.com/

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