古今東西の品々が集結の『民藝展』世田谷美術館で開催。特設ショップで財布のヒモ崩壊?!

世田谷美術館で6月30日まで開催の『民藝MINGEI―美は暮らしのなかにある』に行ってきました。「衣・食・住」をテーマに民藝をひも解き、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々が多数展示され、その数と質は圧倒的。現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションも必見です。

「民藝」の名品が勢ぞろい

大分・小鹿田焼の器、青森・こぎん刺しの名刺入れ、秋田・イタヤ細工のかご…。我が家にはたくさんの手仕事のものがあります。それらはいずれも「民藝」品と呼ばれています。その「民藝」という言葉が生まれたのは約100年前。思想家・柳宗悦が民衆的工藝を略して「民藝」と提唱し、それらを展示する「日本民藝館」を設立したのです。

テーブルは鳥取の工芸品、椅子と食器棚はイギリス製、濱田庄司の茶碗や河井寬次郎の角鉢など「民藝スター」の器も食卓に並ぶ。

展示の最初に迎えてくれるのは、1941(昭和16)年に開催された日本民藝館「生活展」での展示の再現を試みるインスタレーション。イギリスの椅子や棚、朝鮮半島の白磁、日本の陶器など、国やジャンルがミックスされているのが面白く、柳宗悦が「こんなふうに多様に使えます」と紹介し、民藝の懐の広さ、使い方の豊かさが伝わってきます。

「テーブルコーディネート」の紹介は当時は珍しく、画期的だったそう。

「働きもの」の暮らしの道具

「衣・食・住」をテーマにひも解き、暮らしの中で生き生きと働いてきた民藝の品々を紹介する今回の展示。最初の「衣」のパートでは美しい色や柄の着物や帯、羽織りなどが並びます。友禅染など、いわゆる着物の華やかさはないものの、暮らしに根差した実直な美しさがあり、昔の人々の息遣いが伝わってきそうです。

民藝といえば…のかごや器も見ごたえがあります。

広島の茶碗かご。

吉田璋也の指導で作られた牛ノ戸焼二色染分皿。

イギリスのスリップウェア角皿。

世界の民藝、これからの民藝

第三章の『ひろがる民藝ーこれまでとこれから』のパートでは、柳宗悦が亡くなった後、民藝運動がどのように展開していったのかが紹介されています。

柳ら民藝運動家たちが、世界中から集めた民藝の品々が並び、目にも楽しい空間となっていて、その土地ならではの風土と結びついたアイテムに唸ってしまいます。

ペルーの木彫りの人形。

岩手の竹細工、兵庫の丹波布、岡山の倉敷ガラス、富山の八尾和紙などなど、民藝運動により注目を集めた日本各地の工芸の産地についても紹介。伝統を受け継いだ現代のつくり手たちの“いま”が、映像とともに紹介され、じっくり堪能できます。

鳥越竹細工。

大分日田市でつくられる小鹿田(おんた)焼き。

千年近く和紙つくりが行われてきた富山市八尾町の八尾(やつお)和紙。

道具の展示も興味深い。

展示の最後は、現代の民藝ブームを牽引してきたテリー・エリスさん、北村恵子さんディレクションによる、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションが。お二人はBEAMSのレーベル『フェニカ』で長年、企画やバイイングを手がけ、民藝の魅力を伝えてきました。近年は、自分たちの店『MOGI Folk Art』を高円寺にオープン。

自分たちのコレクションも加えた民藝のインテリア実例。

市松模様の床がポップなダイニング。北欧を代表する家具デザイナー、ブルーノ・マットソンのダイニングテーブルに、チェアは天童木工。テーブルの上には、日本各地の窯の器が。アアルトの「スツール60」の色がアクセントになっている。

さまざまなジャンルや国のアイテムがミックスされて、民藝との自由な接し方を教えてくれる。

これ以上ない品ぞろえ!美しい民藝を持ち帰ろう

そして、展示の最後は「実践編」。特設ショップには、民藝ファンにとっては憧れの老舗の名店・人気の工房から、国内外の職人による民藝の品々が会場に集結!その数とバリエーションは圧倒的で、今後、これ以上のものを一気にみられることはないのでは?と興奮してしまう充実度なのです。(何時間でも滞在できそう)。どれもこれも欲しくなってしまい、お財布のヒモがぐっとゆるくなる危険なエリアですよ。

注目の染色家、アーティスト・宮入圭太さんが本展のためにデザインしたグッズも鮮烈!

緑豊かな世田谷公園の中にある世田谷美術館。新緑のこの時期、とても気持ちよい場所です。暮らしのなかにある「美」を見つけに、ぜひお出かけください。

民藝 MINGEI — 美は暮らしのなかにある【公式】

期間:2024年4月24日(水)~6月30日(日)
場所:世田谷美術館 1階・2階展示室
住所:世田谷区砧公園1-2
会場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日
料金:一般/1,700円(65歳以上1,400円)、大高生/800円、中小生/500円

取材・文/鈴木麻子

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