家具デザイナーを志し、24歳でイタリアへ。その後30年近くをイタリアで暮らしているという椎名香織さん。パンデミックの只中で移り住んだというご自宅は、本当に気に入ったものだけを置いた無駄のない住まいの形でした。
椎名香織/しいなかおり
1986年渡伊。ミラノの建築事務所「De Pas D’urbino Lomazzi」に
勤務後、2012年にリカルド氏と「Shiina+Nardi Design」を設立。15年に職人技に光を当てたブランド「HANDS ON DESIGN」をスタート。
ミラノから北東に約15㎞、歴史と緑溢れる街モンツァ。その中心街に建つ中庭を囲う18世紀の元修道院が、椎名香織さんと公私にわたるパートナー、リカルドさんの自宅です。
「私にとって心地よい空間とは、明るく爽やかな場所」と、椎名香織さん。往時の褐色のフローリングの床をあえて削って自然な風合いにし、室内を白で統一。所々に覗く大好きなカラー、水色を爽快なアクセントにしました。
最上階の天高のある空間は、伸びやかな視界と心地よいゆとりを保ちながら、 部分的にロフトを組み込み、開放的かつ機能的な170m²もの広さがあります。
「私はデザイナーですが、暮らしはモノに縛られないシンプルスタイル。日伊間の往来や出張の数々、さらに新天地への好奇心は止まず、ここには本当に必要な愛するものだけ置いています」
繰り返し読みたい書籍や木目の美しい建築古材で作られた本棚、滑らかな感触と光が魅力的な陶器のペンダントライト、また各国のデザイナーとイタリア職人の協働による自身のブランド、HANDS ON DESIGNのアイテムなど。すべて作り手の顔と温もりを感じられるものばかりです。
「世間知らずの私を、大手を広げて受け入れてくれ、文化や歴史、自由や人道主義を肌を通して教えてくれたのがイタリア。心から感謝し、今も魅了され続けています」。
写真/Alessandra Ianniello 取材・文/徳永佳代 編集/友永文博 再編集/久保田千晴