映画好きイラストレーター宮崎祐治さんが「言葉」をテーマに選んだ5本。映画の世界を印象づける魅力ある名セリフ

活躍中のイラストレーター宮崎祐治さんが心にしっかと留めていた映画の中の言葉を、描き出してもらいました。視点はユニーク!それぞれの言葉が、またパワーアップして輝き直してくるのも面白い。
字幕に凝縮したかっこいいセリフに憧れる。
\映画『スケアクロウ』より/
「案山子(かかし)になれよ
案山子を見てカラスは笑っているんだ。
親愛の情があるから
カラスは畑を荒らさないんだ」

「とても好きな映画のひとつで何度も描いてきました」。映画のテーマが詰まっているようなアル・パチーノのセリフ。
作品の世界をビシッときめたシンプルな名セリフのお楽しみ。
映画を専門にイラストを描いてきた宮崎さん。生み出した作品も観てきた映画も4ケタ!とおびただしい数。「映画好きといっても、僕の場合は1本ずつとは軽く向き合ってきた気がします。一言のセリフに深く納得するというよりは、映画の世界を印象づける魅力ある名セリフに惹かれます」
\映画『パルプフィクション』より/
「こういうの嫌い
「何が?」
「気まずい沈黙 それを避けようとくだらないことをしゃべるのよね?」
「そうだな 面白い疑問だ」
「好きな相手だと違う」

クエンティン・タランティーノ監督の出世作。アカデミー賞脚本賞を受賞。シンプルな好意の表現が字幕で洒落ていく……。
宮崎さんは3月に鎌倉の川喜多映画記念館で開かれた「映画字幕翻訳の仕事」展で、企画とイラストを手掛けました。「字幕翻訳家たちのバックステージの話を聞けたことで、映画字幕、セリフへの認識がまた新たになりました。1秒4文字、限られた文字数の中で削り出された言葉はやはり、濃縮度がすごい」
\映画『テルマ&ルイーズ』より/
「あんたは最高」
「あんたも。最高のバカンスだった」
「少し脱線したけど」
「本当の自分になれたのよ」

旅に出かけたふたりは思わぬいきさつで追い詰められるが、一方で「本当の自分」を見つけ晴れ晴れとしたやりとりを交わす。
「尊敬と憧れをこめて」今回は5作品をセレクト。出会ってから数十年、輝きを失わない名セリフと映像をイラストに。「勝手に師と仰ぐ」和田誠さんの袋文字をオマージュするような形で書かれた文字にも注目。
\映画『さらば愛しき女よ』より/
「楽しみはジョー・ディマジオの連続安打だけだ」

1940年代のLAが舞台。「ミッチャムの声もスタイリッシュ」。映画の言葉には時代やハードボイルドなテイストが宿ったまま。
\映画『ワイルド・アット・ハート』より/
「彼女への愛を証明させろ」

「70~90年代頭くらいのロードムービーにはどうしても惹かれます」。主人公の純情を印象づけるセリフをピックアップ。
PROFILE
宮崎祐治/みやざき・ゆうじ
和田誠著『お楽しみはこれからだ』に触発され、学生時代から映画をテーマにイラストを描き始める。CMやTV番組の演出を手掛ける一方で『キネマ旬報』等で50年に渡り作品を発表、現在はイラスト一本で活躍。著作に連載コラムをまとめた『東京映画地図』等。
『クウネル』2025年7月号掲載 取材・文/ 原 千香子
SHARE

『クウネル』NO.133掲載
人生を豊かにする「言葉の力」
- 発売日 : 2025年5月20日
- 価格 : 1,080円 (税込)