「行き当たりばったりでも意外に素敵なものが生まれることも」島田順子さん×雨宮塔子さん対談/前編

これから先、どう歩いていけばいい? そのヒントを求めて島田順子さんを、同じパリに暮らす「後輩世代」雨宮塔子さんが訪問。人生が楽しくなる先輩たちの言葉をお届けします。

冒険やチャレンジすることが、自分の中に積み重なっていくから面白いのよね。

パリ在住四半世紀の雨宮塔子さん。今日は共通点の多い先輩の島田順子さんの仕事場を訪ねて、年を重ねても豊かに生きる術をいろいろと伺います。

「目上の方にお目にかかるのにデニムは失礼かと考えましたが、順子さんに限っては許されるかなと思いました」と雨宮さんは『JUNKO SHIMADA』の新作に私物のデニムを合わせて。ブラウス 6万6,000円、ライダースジャケット〈参考商品〉、新作ニットで雨宮さんを出迎えた順子さん。ニット 8万8,000円すべて『JUNKO SHIMADA』

雨宮塔子さん(以下、雨宮)

充実した人生を送られていますが、その秘訣は?

島田順子さん(以下、島田)

あまりなくて。好きなことをしていることくらいかしら。

アンナ

私は好きなことしかできなくて。子育てについては責任が伴うのでそうはいきませんが、仕事に関しては同じです。だからフランスに来るしかなかったのかもしれません。あまり計画して来たわけではないんです。

島田

計画して来るとそうならなかったときに落ち込みそうで、怖くならない?行き当たりばったりでも意外に素敵なものが生まれることもあるでしょう

雨宮

”行き当たりばったりの素敵さのマジック”って、フランスによくあります。私は一度決めると、止める人がいてもそれ以外のことは考えられなくて。

島田

そうじゃないと、フランスでは生きていけないから。

雨宮

ここにいると、日本ではやや霞んでいる自分の本音がはっきり見えてくるような気がします。

島田

こちらに来て何年になりますか?

雨宮

25年ですね。1999年、ちょうどフランがユーロに変わるときでした。2016年に一時拠点を日本に移したとき、違いを余計に痛感してしまいました。

島田

ちょっと距離を置くと比べてしまうから。私も来たばかりの頃はカルチャーショックを受けて、日本ではこうじゃなかったとかこっちはこうなんだとか、違いをすごく感じたけれど、今はフランス人は正直なんだなと思うくらいで、それほど違いがないとわかりました。

雨宮

順子さんは今年83歳になられたと伺いました。うちの母と同い年です。

島田

お化粧とか、何もしていなくて。

雨宮

でもそのナチュラルさがフランスっぽい。ナチュラルで素敵なことほど難しいものはないと思うんです。やっぱり生き方が表れているということ。魂レベルの元気といいますか、それがフランスで長く活躍されている秘訣なのかも。

Junko Shimada’s story

幼少期 千葉県館山に生まれる

海のそばでのびのび育った順子さんは、祖母の粋な着物の着こなしや振る舞いに影響され、ヨットや狩猟などハイカラな趣味を持つ父にかわいがられました。そして女は自立すべしという母の教えで洋裁を習うことに。

(写真提供:島田さん)

29歳 パリの『マフィア』に入社

ヌーヴェルヴァーグ映画やパリへの憧れが募り渡仏。新しい刺激を受けて勉強を重ねて、プランタン研究所に勤務。そののち広告宣伝のプロが集まるデザイナー集団『マフィア』に約5年間所属して、懸命に働いた。

(写真提供:島田さん)

40歳 『JUNKO SHIMADA』設立

『キャシャレル』のデザイナーをやめた後、京都の『ルシアン野村』から声がかり、思いがけず自分のブランドを始めることに。パリで『JUNKO SHIMADA』を設立。シャツ地を使った初コレクションは大好評。

(1982年クロワッサンno.116 撮影:柴田博司)

40代 子育てと仕事

年下の恋人との間で妊娠がわかり、出産。娘を今日子と名づけた。その後恋人とは別れ、シングルマザーに。「コレクション制作と子育てで目の回るような忙しさでしたが、娘のかわいさに癒されていました」。

(写真提供:島田さん)

47歳 パリで結婚

山地三六郎さんとは40歳を超えて東京で知り合い、数年は遠距離恋愛。でも「5月の連休にしかパリへ行けないからそのときに結婚しよう」とプロポーズを受け結婚。その後も東京とパリとを行き来する夫婦だった。

(写真提供 島田さん)

PROFILE

島田順子/しまだ・じゅんこ

千葉県館山生まれ。1981年JUNKO SHIMADA DESIGN STUDIOを設立。2024-25年秋冬でコレクション発表が86回目に。『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』(マガジンハウス)など著書多数。

雨宮塔子/あめみや・とうこ

1970年東京都出身。TBSに入社し情報番組などで活躍。退社後は単身パリへ渡る。2016年から『NEWS23』のキャスターを務めたのち再びパリを拠点に。9月26日に『MY HOME, MY LIFE.』(光文社)を発売。

『クウネル』2024年11月号掲載 写真/山下郁夫、ヘア/出来和枝(雨宮さん)、コーディネート/鈴木ひろこ、取材・文/綿貫あかね、編集/黒澤弥生

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『クウネル』NO.129掲載

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