【目利きが選ぶフランス映画】「フランス映画には硬質でアンニュイな大人の女がたくさん!」

夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっている。目利き10人におすすめのフランス映画について聞きました。今回はモデルのはなさんと、トータルビューティクリエーター川邊サチコさんのおすすめです。

切なくもリアルな歳月による変化は、人にも恋愛にも あまねくもたらされます。それをあくまで前向きに 自然に受け抗わない、それもフランス映画の教訓!

映画内の女優も女優自身も。年を重ね輝く姿に感動。

フランス映画は、モデルとしての勉強のテキストだったけれど、大人になりだんだんフラットに楽しめるようになったというはなさん。

「『ポルトガル、夏の終わり』はとても穏やかな気持ちで観られた映画。何かが起きることはないのだけれど、主人公の年輪を重ねた人生観や佇まいに美しさを感じました」

死期を悟った女優が関わりの深い人たちを引き合わせるために避暑地に皆を呼び寄せるという話。老いを感じさせない大御所女優を演じるのはイザベル・ユペールです。

「フランスの女優は自然に歳を重ねている、とよく思います。いくらしわしわでも奥底の美しさで輝いていて、外見もですが内面も美しいと感じさせる。ユペールさんはその代表ですね」

常に毅然として美しい女優も、また女優を自然に(と見せて?)演じる女優も嫌味なくナチュラルで、誰もが自発的に襟を正したくなる?!

『ポルトガル、夏の終わり』

女優フランキーは、世界遺産の町、ポルトガルのシントラに夫、昔の夫、息子、義理の娘の家族、年下の友人を呼び寄せる。自分が去ってからも皆が幸せに暮らせるようにと願って。しかし皆それぞれに人生の事情を抱えており、プラン修正も必要になっていく。「死を予感しているとは思えないほどきれい、緊張感のある女優は素敵でした。感情が細やかに描かれているのも彼女をいきいきと見せるのかも?」。ユペールは70年代から活躍し続け輝きを失わない。2019年製作。 Photo: aflo

同じ監督キャストでひとつの愛を描ききる情熱にも平伏。

「60年代から、同時代のフランス映画を観ていたことになります。役者に雰囲気があって、なにか香りがあるのが魅力だったし、硬質でアンニュイな大人の女がたくさん! 飛びつきましたよね。アメリカ映画より肌が合うと」  

美容家の川邉サチコさんがすすめるのが『男と女』の3作。

「すべて制覇してこそ面白い。男と女の恋愛がとうとう人間愛にまで純粋に昇華していくのは、すごいですよ。最初のはロマンやアンニュイが溢れ、Ⅱは愛が完熟して再燃、3作目では男はもう死に近づいているけれど愛する心を回顧……。通してみると二人の関わり合いは鬱陶しいほど。でも愛にも経年の変化があって、人生ってこんなものなのよ、と肯定的に教えてくれます」  

同じキャストで大きくは話も続いているのも興味深いところ。二人も老いていき、恋愛自体も成長し老いていく。子どもにはわからない?!愛、芸術、思想……etc. 芸術家の生き方に結論は不要と思えてきます。

『男と女』

夫を亡くした映画スクリプターのアンヌ(アヌーク・エーメ)とレーサーのジャン゠ルイ(ジャン゠ルイ・トランティニャン)は子どもをドーヴィルの同じ寄宿学校に通わせていたことで出会う。「アヌーク・エーメが女っぽくて。洒落た映画でした」。クロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイの音楽で世界を席巻した仏恋愛映画の代表。1966年製作。photo:aflo

『男と女Ⅱ』

1作目から20年後の男と女の再会と愛の行方を描く。映画プロデューサーとなっていて、ジャン゠ルイとの出会いと別れのストーリーを映画として世に出そうとするアンヌ。「愛から目をそむけず、愛に対してオープン。フランス人が愛を追求する様子って真面目ですね」。ジャン゠ルイは若い恋人もいてなかなかの修羅場が……。1986年製作。photo:aflo

『男と女 人生最良の日々』

『男と女』から52年後にスタッフ、キャストが再集結し撮影された。アンヌは彼の息子に頼まれ老人ホームで暮らしているジャン゠ルイを訪ねる。「すっかり枯れたジャン゠ルイと美しく年を重ね元気なアンヌ。でも人の経年変化の話ではなくて愛の純化ですね。3本になって、映画の味わいが深まりましたね」。愛の巨編の完結編。2019年製作。photo:aflo

すすめてくれた人

はな/hana

モデル・エッセイスト。高校時代からモデルを始め、ラジオのナビゲーターから書籍、雑誌、WEBでの執筆まで広く活動。20代で語学習得のためパリに逗留し、アパルトマンに暮らした時期もある。

川邉サチコ/かわべさちこ

トータルビューティクリエーター。1960年代、70年代パリにてモードの仕事に携わる。「今はあまり話題にならないけれどジャン・ギャバン、シモーヌ・シニョレ、イヴ・モンタンなども素敵でしたね」

『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子

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『クウネル』NO.128掲載

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