【目利きが選ぶフランス映画】「フランス映画には硬質でアンニュイな大人の女がたくさん!」
夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっている。目利き10人におすすめのフランス映画について聞きました。今回はモデルのはなさんと、トータルビューティクリエーター川邊サチコさんのおすすめです。
切なくもリアルな歳月による変化は、人にも恋愛にも あまねくもたらされます。それをあくまで前向きに 自然に受け抗わない、それもフランス映画の教訓!
映画内の女優も女優自身も。年を重ね輝く姿に感動。
フランス映画は、モデルとしての勉強のテキストだったけれど、大人になりだんだんフラットに楽しめるようになったというはなさん。
「『ポルトガル、夏の終わり』はとても穏やかな気持ちで観られた映画。何かが起きることはないのだけれど、主人公の年輪を重ねた人生観や佇まいに美しさを感じました」
死期を悟った女優が関わりの深い人たちを引き合わせるために避暑地に皆を呼び寄せるという話。老いを感じさせない大御所女優を演じるのはイザベル・ユペールです。
「フランスの女優は自然に歳を重ねている、とよく思います。いくらしわしわでも奥底の美しさで輝いていて、外見もですが内面も美しいと感じさせる。ユペールさんはその代表ですね」
常に毅然として美しい女優も、また女優を自然に(と見せて?)演じる女優も嫌味なくナチュラルで、誰もが自発的に襟を正したくなる?!
同じ監督キャストでひとつの愛を描ききる情熱にも平伏。
「60年代から、同時代のフランス映画を観ていたことになります。役者に雰囲気があって、なにか香りがあるのが魅力だったし、硬質でアンニュイな大人の女がたくさん! 飛びつきましたよね。アメリカ映画より肌が合うと」
美容家の川邉サチコさんがすすめるのが『男と女』の3作。
「すべて制覇してこそ面白い。男と女の恋愛がとうとう人間愛にまで純粋に昇華していくのは、すごいですよ。最初のはロマンやアンニュイが溢れ、Ⅱは愛が完熟して再燃、3作目では男はもう死に近づいているけれど愛する心を回顧……。通してみると二人の関わり合いは鬱陶しいほど。でも愛にも経年の変化があって、人生ってこんなものなのよ、と肯定的に教えてくれます」
同じキャストで大きくは話も続いているのも興味深いところ。二人も老いていき、恋愛自体も成長し老いていく。子どもにはわからない?!愛、芸術、思想……etc. 芸術家の生き方に結論は不要と思えてきます。
すすめてくれた人
はな/hana
モデル・エッセイスト。高校時代からモデルを始め、ラジオのナビゲーターから書籍、雑誌、WEBでの執筆まで広く活動。20代で語学習得のためパリに逗留し、アパルトマンに暮らした時期もある。
川邉サチコ/かわべさちこ
トータルビューティクリエーター。1960年代、70年代パリにてモードの仕事に携わる。「今はあまり話題にならないけれどジャン・ギャバン、シモーヌ・シニョレ、イヴ・モンタンなども素敵でしたね」
『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子
SHARE
『クウネル』NO.128掲載
フランス人の素敵なルール
- 発売日 : 2024年7月20日
- 価格 : 1000円 (税込)