自ら設計した平屋で楽しむ、70代のひとり暮らし。造形作家・小前洋子さんのくつろげる部屋 (前編)

ほっとする、リラックスできる、落ち着く。クウネル世代にとって部屋は、くつろげることが大切です。それは、家族の形態が変わりひとり暮らしをするようになっても、実家を引き継ぎリフォームすることになっても、都心から自然豊かな地に暮らし替えをしても、そしてパリのアパルトマンでも。自分のスタイルとさまざまなストーリーを持つ16組のくつろげる部屋をお届けします。今回は造形作家・小前洋子さんのお部屋です。

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間取り

築22年。正方形の家にしたのは、耐震性が高いことから。生活の変化にフレキシブルに対応できるワンルームに。風の通りや光の入り方も計算し、開口部の位置や形状も細かく設定。

湿度調整に優れた自然素材で心地よく。

玄関を入ると部屋全体が見渡せるシンプルなワンルーム。テラスに出入りできる掃き出し窓は、風が抜けるよう高窓も設置、床はクッション性と蓄熱性のある自然素材。

外房の海まで車で5分ほど、農地や雑木林が広がる千葉県・いすみ市にある小前洋子さん宅。「〝庭がある家〟じゃなくて、〝家がある庭〟に住みたくて」と土地を探し、22年前、52歳のときに建てた平屋の一軒家に一人で暮らしています。

「40代後半まで住んでいたマンションが建て替えになり、代替の新築マンションに移り住んだのですが、狭さや居心地の悪さに耐えられなくて。正直、高齢の一人暮らしはこの先マンションを借りられないかもしれない、と思ったことも自分で家を建てた大きな理由でした」

敷地全体は460平米。門からアプローチを抜けると大きなねむの木のある庭が出迎えてくれる。左の母家の屋根と外壁は、丈夫で塗り替えの必要が少ないガルバリウム鋼板を用いてコストを節約。ときには台風の心配も。

「片流れの屋根は強い風が吹くと共鳴してうなりをあげるんです。庭の砂地は作物が育たないことも住んでみてわかったこと。土を入れ替えて畑を作ろうと計画中です」

広い庭にこじんまり佇む素朴な木の家は、50平米の正方形のワンルーム。聞けば、小前さん自ら設計したといいます。

「建築は素人ですが、小学生の頃から方眼紙に間取りを書いて遊んでいて、設計が趣味なんです。家を建てる前に独学で勉強もして、壁や床の素材も自分で選び抜きました。図面を工務店に持ち込んだら、びっくりされましたけどね」

PROFILE

小前洋子/こまえ・ようこ

〈ヨーガンレール〉を経て、アクセサリーと布雑貨のブランド「アンジンクチン」を友人と立ち上げる。移住先で陶芸に誘われたことがきっかけで造形作家に。

『クウネル』2024年7月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/矢沢美香

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『クウネル』NO.127掲載

くつろげる部屋が好き!

  • 発売日 : 2024年5月20日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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