パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISの主宰・荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしをご紹介。第15回目は、荻野さんがフランス・パリのクリスマスのカルチャーについてご紹介します。
フランスのクリスマスに欠かせない素朴でカラフルなサントン人形
今、フランスはクリスマス一色!毎日、カウントダウンをしている気分で、プレ・クリスマスのワクワクした雰囲気を満喫しています。シャンゼリゼ大通りのイルミネーション点灯式を皮切りにフランス各地でも町のいたるところでイルミネーションがスタートし、寒い冬空に小さな光がキラキラと瞬いて、まるで夢みたいな美しさです。
12月になるとマルシェ・ド・ノエルというクリスマス期間限定のマルシェも始まります。広場や大通り沿いに山小屋風の屋台が並び、プレゼント向けの小物や雑貨、グルメなどいろんな種類のお店が集って、毎日たくさんの人でにぎわいます。ヴァン・ショー(ホットワイン)やタルティフレット(チーズとじゃがいもの料理)の良い香りがマルシェから漂ってくると、あぁ、クリスマスが来たなぁと実感します。
そんなマルシェ・ド・ノエルに欠かせないお店のひとつといえば、サントン人形屋さん!さまざまな人物や動物たちをかたどった焼き物の人形で、大きなサイズでも人差し指ぐらいの大きさ。素朴な姿とカラフルな色合いが特徴で、見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
Santon de Provence(プロヴァンスのサントン)は南仏プロヴァンス地方の伝統的な工芸品として知られ、古くはパン(中の白い部分)を使って作っていたそう。イエス・キリスト誕生の場面を再現したCrèche de Noël(クレッシュ・ド・ノエル)というクリスマス飾りに使われ、赤ちゃんのイエスとマリア、ヨセフ、三賢者、天使のほか、ロバや羊、犬、そしていろんな職業の人々など、宗教とは直接関係のない人物や動物も一緒に飾られます。
すべて手作りで、ぽてっとした素焼きならではの風合いがこれまた愛らしい。今はキリスト誕生の登場人物に限らず、ありとあらゆる種類の人形があるので、クレッシュは飾らなくても普段の置物としてコレクションしたくなる楽しさがありますよね。自分の仕事にちなんだ人形を買ってみるのもよさそう。
まるでお雛様飾りのように、昔から家族で大事に受け継いできた小屋やサントン人形を出してツリーのそばに置いたり、教会では、もっと大きなサイズの立派なクレッシュを飾ったりします。キリスト教の風習なので、クリスマスツリーに比べるとクレッシュを飾っている家庭はさほど多くはありませんが、それでもフランス人にとってクリスマスの季節に欠かせない大切な習慣です。
そして、南仏の太陽を思わせるような鮮やかな色合いも素敵で、眺めているだけで元気が出ます。今年もまた、屋台の前で足を止めて、ひとつひとつ、じっくり眺めてしまいそうです。
文/荻野雅代