【2022年マイベストブック】翻訳家・岸本佐知子さんが美しい日本語に浸る本とは?

書籍『優しい地獄』

本に囲まれて暮らす読書好きな方々が、今年刊行された書籍の中で最も心に響いたおすすめの1冊をピックアップ。それぞれの作品の魅力を語っていただきました。今の時代を写しとった文芸作品から、生き方や想いに共感した本、学びのための本まで。新たな出合いのきっかけに、ぜひ手にとってみてください。

日本語の不思議な美しさが、焚き火のように心に効いて

書籍『優しい地獄』の表紙
優しい地獄』イリナ・グリゴレ
ルーマニアに生まれ、川端康成の『雪国』や歌舞伎に魅せられ、現在は人類学者として弘前に暮らす著者の自伝的エッセイ。1,980円

チャウシェスク政権下での幼少期の思い出、日本への想い、日々の暮らしなどが、彼女のあたたかでどこか懐かしい日本語で綴られていきます。ルーマニア語を母語とする著者が綴る日本語がとにかく不思議な美しさで、思わず声に出して読んだり、書き写したりしたくなるフレーズに満ち溢れています。たとえば田舎の祖父母の家で過ごしたこんな場面。

〈桜が枯れた冬、木を薪にして暖炉にくべた。木の声が聞こえた。歌っていると思った。私が子供の時に歌っていたのと同じ歌。〉唯一無二の声をもつ書き手が登場した!と興奮しました。気がついたらバキバキに肩が凝っている人。「温泉行きたい……」と口癖のように言ってしまう人。そんな人の心に焚き火のように効く本です(ちなみに全部私のことでもあります)。

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/玉井俊行、取材・文/𠮷川明子、編集/矢沢美香

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