歌人・小島なおさんが探し続ける『かけがえのないもの』とは?「何も起こらず、誰にも知られない日常の連続こそ…」

人生のどこかで、ふとしたきっかけで出合った忘れられない言葉。勇気を与えてくれたり、心を軽くしてくれたりそれぞれの人が心に留めている大事な言葉を教えていただきました。
小島なおさんが大切にしている言葉。

短歌は「かけがえのなさ」を詠む詩型ですが、「かけがえのないもの」って何だろうと歌を作るときいつもそこに心が立ち返ります。
私たちは「かけがえのないもの」をつねに探し求めてしまいます。さかのぼれば竹取物語やハチ公物語なども。ハチ公物語では、帰らない主人を待ち続けるシーンに胸打たれますが、人と犬が普通に暮らしていた時間が本来「かけがえのないもの」であるはず。にもかかわらず、それが失われることでしか私たちは「かけがえのないもの」と気づけない。
何も起こらず、誰にも知られない日常の連続こそ「かけがえのないもの」であり、ドラマティックでないほど、無意味であるほどに、かけがえのなさの本質がそこにあるのだと教えられた言葉です。
PROFILE
小島なお/こじま・なお
歌人
歌人である母の影響で高校在学中に短歌を作り始める。2004年、角川短歌賞受賞。歌集『乱反射』(角川書店)で現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞を受賞。コスモス短歌会所属。日本女子大学講師。
『クウネル』2025年7月号掲載 写真/上澤友香、取材・文/矢沢美香
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