【これからのメロウライフvol.1】53歳エディターに忍び寄る「シニア」の呪縛

エディターの山村光春さんと、エッセイストの広瀬裕子さんによる連載が始まります。

「60代以降に使われる『シニア』という呼び方がどうもしっくりこない」という2人が、「私たちらしい人生の後半戦」について模索します。シニアでもなく、シルバーでもなく……。

例えば「メロウ」というのはどうでしょう?
クウネル・サロンらしい、「これからの人生」メロウライフです。

“往生際ちょい悪シニア”の決意

こんなことがあった。

とあるレストランでワインを注文すると、ソムリエがセラーからおすすめの3本を持ってきてくれた(よく片手で持てるなといつも感心する)。で、それぞれの説明をしてくれるのだが、これがおもしろい。

「右のは渋みもありつつパワフルでカッコいい感じ、こっちは溌剌とした生命力があってチャーミング、最後は角のとれた土っぽさと素朴さがあって。熟成は同じくらいなんですけど、それぞれ違うおいしさがあるんですよねー」

 

かつてワインは熟成期間が長いほどヴィンテージ価値があり美味、とされてきたけれど、今(とくにナチュラルワイン)はそうとも限らない。大事なのは年数よりも、むしろ“個性”。育った環境、作り手のセンスや思想が混じりあい、唯一無二の味になる。だからこそ、新しい出会いが楽しい。

そうした話にふんふん、と耳を傾けながらふと思った。

「ホントは人だってそうなんだよなー」と。

人は、とかく人を生きてきた時間=年代ですべてをくくりたがる。就職、結婚、子育て、マイホーム……それぞれの世代で起きるであろうライスステージの歩みと、それにともなう趣味嗜好がばっくり決められ、“ほにゃらら世代向け”の、あらゆるものやサービスが設計されていく。

行政や企業としては、そのほうが合理的なのだろう。けれど本当は、同じなわきゃない(ですよね?)。どんな世代も、いろんな好みや個性があってしかるべき(と、思いません?)。

ちなみに僕はこれまでの人生で、一度も就職をしたことがない。結婚もしていないし、子どももいないし、家や車を買ったことも、そのためにお金を借りたこともない。同じ世代が「やってて当然」の経験を、てんでしていない。

ただこれまでは、それによる痛みや苦しみを感じてきたわけではなかった。同世代向けではなくても、自分なりのスタイルを築くことはできた。もちろん、蚊帳の外に放り出された”社会“という虫に刺されたようなモヤモヤとした”痒み”は常にあるけれど。

55歳以上からは「シニア世代」になるらしい

そんなこんなでなんとか凌いできた少数派人生も、もうすぐ54年めを迎える。これまでは“ほにゃらら世代”という枠内に収まることなく、彼ら向けのものやサービスを受けることもなく生きてきた。けれど、いよいよ避けては通れないかも、と恐怖におののいていることがある。

そう、忍び寄る「シニア世代」という呪縛の呼び名だ。

WHO(世界保険機関)では、シニアを65歳以上と定義しているが、転職市場では、すでに55歳以上から「シニア世代」と呼ぶそうだ。

「そうかー。あと2年で僕はシニアになるんだなぁ」と、ぽかんと思う。完全に人ごと。まったく実感がない。

しかしながらこれからは、忍び寄るどころか徒党を組んでやってくる「老い」にともない、シニア向けのものやサービスにお世話になることも増えてくるだろう。老眼鏡やでっかい文字のデジタルデバイス、ファンシーカラーの健康器具……また食べるものに着るもの、住む街や旅のかたちも、おそらく変えざるを得ない。ただ、巷にあるそれらの選択肢は、あまりにも「シニア像あるある」に偏っていて、欲しいと思えるものはほぼない。ないったらない。

だけど、それでも。好みと気分に近いものを選びたい。諦めたくない。ないったらない。

豊かな個性のある生き方を探して

そこで本連載は、そんな“往生際ちょい悪シニア”の僕ヤマムラと、エッセイストの広瀬裕子さん。年齢も、性別も、暮らし方も、嗜好も。それぞれ「似たところもあるけれどやっぱり全然違う」ふたりが、老いを受け入れつつ、選ぶものやサービスにはあらがい、自分なりのスタイルを確立していく記録である。

タイトルは「シニアライフ」とはどうしてもつけたくなかったので「メロウライフ」とした。

「メロウ」とは“円熟”という意味。ワインが熟すことで、それぞれがふくよかで個性的な味わいに変化していくように、人もいろいろな「メロウ」な生き方があっていい。そんな意味をこめて。

それに、メロウって響き。なんか素敵じゃないですか?
ゆうこさん、みなさん、どうでしょう?

~アフターメロウトーク~

広瀬

山村さんと年齢について以前、話をしたとき「本当は、老後なんてないのに」と言っていたのが印象的でした。本当にそうだなと思って。それからわたしも「老後はない」と思っています。

山村

そのことはよく覚えてますし、今もそう思っています。それに「悠々自適」なんて言葉も、もはやこの世にあるのだろうか?

広瀬

老人やシニアという括り。老後も、老人も、その括りに入れられると急にそれと合わせるようになる気がします。シニア、セカンドという言葉に対しても60代はこうでしょう。70代はこうです。そんな風に分けるのは、もうあまり意味がない気がしています。

山村光春/やまむらみつはる

編集者・ライター。1970年大阪生まれ。BOOKLUCK代表。雑誌「オリーブ」のライターを経て、現在は雑誌や広告、書籍、ウェブなどの編集・執筆をはじめ、講座やイベント、ワークショップなども数多く手掛ける。
2013年よりリフレクソロジーの勉強を開始。2015年より東京と福岡の両方に拠点を持ち、これからのよりよい暮らしを模索しながら活動。著書に「眺めのいいカフェ」(アスペクト)など多数。広瀬裕子さんとは20年来の友人。

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