引田かおりさんの新刊『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)が話題です。惹かれるのは、潔よく、示唆に富んだタイトル。長らく家族を優先して暮らし、自己肯定感に乏しかったという引田さんが、「NO」という練習を重ね、自分自身の「好き」を優先した先にみつけた気持ちよさについて、紹介してまいります。シリーズの最後には引田かおりさんのインタビューも。
「自分のことはたいていあとまわしだった」という、家族第一主義の30代。自己肯定感を高め、幸せになるためには、「自分が自分を大切にしないと」と気づき、まずやろうと思ったことは「NO」という練習。「″どっちでもいい″と選択を自分以外の人にゆだねたままでは、自分の人生を生きられない」と思ったのだと振り返ります。上手くいかず悶々と過ごす長いトンネルを超え、60代を迎えた引田さんは自分の「好き」を優先し、気持ちのいい日々を送っています。そんな「気持ちのいい日々」とは……。
大きな引き出しチェストを手放しました
「なくてはならない」と思っていました。「いなくなったら絶対困る」と思っていました。2020年の夏に、大切な家族の一員だった犬が、静かに死にました。歩けなくなり、食べられなくなって3日。それは見事な最期でした。犬まわりのものが入れてあった引き出しを片付け、使ってもらえそうなものは保護犬の活動をしている方に送りました。あとに残った、ガランと空っぽの引き出し3段。
その引き出しがあったのは、テレビや雑誌などで何度も取材を受けた、わが家のシンボルのようだったチェスト。ハンカチ類やカトラリー、薬に文具類など、暮らしまわりの細々したものを収めていた、計16個の引き出しの大きな家具です。「悲しいけど、大丈夫。しっかり生きていくからね」。愛犬にそのことを証明でもするかのように、片付けて片付けて、片付けました。今できることをやることで、「できることをやり切ったんだ」と思いたかったのかもしれません。
そうして文房具だけを入れる引き出しを新しく買い、チェストと別れを告げました。それまでも自分は執着が少ないほうで、ずいぶんいろんなものを手放してきたつもりでしたが、「絶対に必要」は、思い込みだったと気づかされました。すべての不幸の源は、執着。今手元にあるものは大切にするけれど、執着したくはありません。今まで本当にありがとう! そして、さようなら。
※本記事は『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社刊)からの抜粋です
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「どっちでもいい」をやめてみる
「どっちでもいい」をやめて、人まかせにせず、自分の「好き」を優先させると、人生を気持ちよく歩けます。本書では、正直な気持ちを表現できるようになれるヒントを、文章と写真で紹介。引田かおりさんが選び抜いた器や洋服、長年集めたかご、ガラス、暮らしの工夫も必見です。