【70代エッセイスト・石黒智子さんのお宅訪問/前編】40年以上住む家はアップデートを重ねて進化中

暮らし上手の石黒智子さんに、片づけの秘訣や、住まいを美しく整える民に心がけていることを教えていただきました。
アイディアと工夫で、整頓は生活の習慣になる。

築41年、1LDK、 100平米に16平米のデッキがある。
ほとんど仕切りがない開放的な鉄骨の住宅に暮らして40数年。石黒智子さんの家はいつもきちんと整理整頓され、掃除もすみずみまで行き届いています。
【キッチンの片づけルール】

棚に白で統一した洋食器を並べた明るいキッチン。左奥にシンクと調理台。テーブルの天板下にある引き出しに台所や掃除回りの生活用品を収納。テーブルはキャスタ一付きで、好きな場所へ移動可能。

棚の一番上の引き出しには夫婦ふたりが日常使う食器を収納。一番頻繁に使うものは、一番取り出しやすい場所に。
「散らかっているのはきらいだし、ものはわかりやすくしておきたいんです。整理整頓って言いますが、整理と整頓は別のもの。必要かどうかを見分けて、取っておいたり処分したりするのが整理。整頓は必要なものをどこにどう置くか、どう使いやすくするかを考えることなんですよ」

石黒さんが愛用するキャンドルウォーマーは、ガスコンロの予備の五徳と汁受けを転用したもの。キャンドルの数を増やせば、すき焼きや鍋物も保温可能。

冷蔵庫に入れた日時をメモして食品の保存瓶にペタリ。実はこれ、解体したパソコンのキーボードを利用したもの。小さな磁石でくっつくように加工した。

キッチンツールはものをたくさん入れると絡まって取り出しにくい。だからこのツール入れの中にはもうひとつ缶が仕込んであり、2重になった空間にものが収まりやすくなっている。
【私の整理哲学】
古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの「優秀さとは行動によって得られるのではない。習慣になっていなければならないのだ」という言葉が好きだという石黒さん。家の中を常に見直し、気づいたこと、気になったことは工夫し改善して、整理整頓を習慣にしてきました。

シンプルな仕事机。 キッチンのテーブルと同じ平らな収納箱が天板の下に。植物を飾った額には今日やることの小さなメモが貼られて。
【箱の活用法】
たとえば好きなクッキー缶や木箱を大いに活用。上写真の石黒さんの仕事机の下には、裁縫道具、手紙や封筒などがお気に入りの缶に入れられて整然と並んでいます。収納エリアには掃除機やブラシなどの掃除道具をまとめて収納。
「こうして一目瞭然にしておけば、私だけでなく家族がささっと掃除できる。片づけがみんなの習慣になるんです」
そのほかにも石黒さんの創意と工夫がこの家には満載なのです。

長かったカステラの桐箱。 石黒さん自ら銘柄の焼き印部分をカットして、小さくリメイク。裁縫道具にちょうどいい。

年賀状は一年分だけ取っておく。住所のわかる面を表にして折ってレシピボックスに。サイズ、量ともちょうどよく、翌年の住所録になる。

友人と交換し合ったり、地域の図書館に寄付したりして、蔵書はこのコーナーにあるのみ。「死んだら私の柩に入れてほしいのはここにある本だけ、と家族にも伝えています」。本の左側に差し込んである新聞は当日のものと、後で読み返したいもの。2部しか置かないように決めている。
【道具の収納】

スキー板を収納していた場所にいまは掃除道具をまとめた。中央上の木のザッハトルテの箱には掃除機の紙パックが入っている。

リビングから寝室へ向かう一角が機能的な収納スペース。

瓶に砂をつめたオリジナルのドアストッパー。エアコンを持たない石黒家では、夏は窓やドアを開け放ち、風を積極的に取り込む。
PROFILE
石黒智子/いしぐろ・ともこ
エッセイスト
キッチン道具や器、生活雑貨の名品を数多く紹介。著書に『70歳からの軽やかな暮らし』(PHP研究所)、「60代シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)など。
⇒後編に続きます!お楽しみに。
『クウネル』2025年5月号掲載 写真/杉能信介、取材・文/船山直子