50代後半で見つけた夏の楽しみは盆踊り。エッセイスト広瀬裕子さんの大人ならではの浴衣の着こなし
エッセイストの広瀬裕子さんの夏の過ごし方について。香川から東京に帰ってきて2回目の夏、地元の盆踊りに参加するという楽しみが増えました。
大人になって見つけた趣味
お囃子や太鼓の音が聞こえてくると、気持ちがふわりと上がります。逸る気持ちを胸に、かろやかな足どりで会場に向かいます。
夏のたのしみに新しく加わったものがあります。それが、盆踊り。この夏も、予定表には、盆踊りのスケジュールがぎっしりです。
こどもの頃は、近くの神社で開かれるお祭りや盆踊り大会へ毎夏、出かけていました。それが思春期になると足が遠のき、その後、ずいぶん長いあいだ、盆踊りに行くことはありませんでした。
その盆踊りに惹かれたのは数年前。ある夏、通りかかった盆踊り会場から流れてくる音と明るいひかりに引き寄せられました。
古くからある夏の楽しみ
記憶の中にある「夏のたのしい」には、いつもお祭りがありました。浴衣を着て、下駄を履き、露店のお菓子をいただく。ヨーヨーや金魚すくい。教わりながら踊る盆踊り。見るものも、やることも、すべてが新鮮な夏の時間でした。
「夏のたのしい」。その思いは、わたしのなかで静かにふくらんでいきました。東京に戻り住むことにした時「盆踊りに参加しよう」と思ったのです。自分でもおどろきました。「え、わたし、そこ?!」と。
その時、決めたことがあります。地元の盆踊り大会に参加することです。盆踊りは各地でありますが、暮らすところを大事にしたいと思っていましたし、また、そう思える場所で暮らそうと考えていました。ですので、スタートは地元にしたかったのです。
でも、地元の盆踊りって? となりませんか? わたしはなりました。その時、思い出したのが、町なかにある掲示板や行政からのお知らせです。そういったものには必ずと言っていいほど「募集」が掲載されています。調べたらありました。東京に住まいを移したのが1月末。SNSで知り合った方に紹介していただき、4月には盆踊り練習会に参加していました。
余談ですが、SNSで知り合った方は、いまでは友人ですが、ある時Instagramで流れてきた盆踊り会場での粋な浴衣姿を見て、思い切って連絡した方です。幸運なことに共通の「すき」がいくつもあり、いまでは連れ立って盆踊りに行くようになりました。
盆踊りのときの持ち物
話をもどしますね。
盆踊りの練習会は、週に1回。入ってからは、できるだけ通いました。こどもの頃に踊っていた東京音頭はすぐ踊れましたが、今の盆踊りは曲目も多く(毎年、新曲がでるのです!)、振りつけも意外とむずかしいのです。練習を地味につづけ、昨年の夏から盆踊り大会に参加するようになりました。
東京の夏は驚くほど暑く、夕方になっても気温が下がりません。うーん、と思いながら、浴衣の袖に手を通します。踊りやすいように、また、荷物を預けられないことを前提に、持ち物は最小限に。手ぬぐいとうちわは必需品。足元は、盆踊用の草履。準備が整う頃には、うーん、となっていた気持ちは、すっかり忘れています。
会場にいけば、同じように盆踊りをたのしみにしている人たちが大勢います。その、わくわく感は、ライブがはじまる前に近いでしょうか。友人や練習会のみなさん。昨年見かけた方。同じものがすきな人たちとの妙な連帯感。そして「さあ」という声とともに、輪ができ、踊りはじめます。
わたしが盆踊りに惹かれる理由を自分なりに考えてみました。
まず、年配の方たちがかっこいいこと。踊りの中心は、わたしより、10歳、20歳、上の方たちです。盆踊りだけなく、お神輿も、お囃子も、木遣も、歳上の方たちが、とにかくかっこいい。生き生きされているみなさんを目にすると、希望が持てます。あとは、音楽に合わせ踊るというシンプルなたのしさ。浴衣姿のうつくしさ。伝統。
でしょうか。
踊っていると、時々、不思議な気持ちになります。たのしかったこと、悲しかったことなど、様々な思いが湧きあがってくる瞬間があるのです。そういった感情を最終的に「たのしい」で包んでくれる。盆踊りには、そんな力があるように感じます。
盆踊りビギナーの昨年は、1ヶ月以上つづく盆踊りスケジュールのエネルギー配分がわからず、後半バテてしまいました。今年は、うまくスケジュール調整しながら参加する予定です。それに加え、シルバーヘアに似合う浴衣や着こなし、メイクも見つけたい。
夏は、まだまだ、つづきます。