自ら設計した平屋で楽しむ、70代のひとり暮らし。造形作家・小前洋子さんのくつろげる部屋 (後編)

ほっとする、リラックスできる、落ち着く。クウネル世代にとって部屋は、くつろげることが大切です。それは、家族の形態が変わりひとり暮らしをするようになっても、実家を引き継ぎリフォームすることになっても、都心から自然豊かな地に暮らし替えをしても、そしてパリのアパルトマンでも。自分のスタイルとさまざまなストーリーを持つ16組のくつろげる部屋をお届けします。今回は造形作家・小前洋子さんのお部屋です。

前編はこちら

間取り

築22年。正方形の家にしたのは、耐震性が高いことから。生活の変化にフレキシブルに対応できるワンルームに。風の通りや光の入り方も計算し、開口部の位置や形状も細かく設定。

湿度調整に優れた自然素材で心地よく。

中央の収納棚をはさんで右奥がキッチン。左奥の北向きの一角は、以前はベッドを置いていた場所で、現在は作品の成形などを行うワークスペース。動線を確保するために、家具もシンプルかつ最小限に。

漆喰に砂と紙を混ぜたオフグレーの壁、泥に藁を混ぜた床など、調湿性が高い自然素材は「空気も気持ちがいい」と話します。収納を兼ねた間仕切りがあるだけの開放的なつくりで、動線もスムーズ。

「10年ほど前にテラスで足を滑らせて骨折したんですよ。そのときも、この広さで平屋にしてよかったと思いました」

ずっと東京住まいで憧れだったという田舎暮らしを叶え、思ってもみなかった陶芸制作も始めた小前さん。

「住んでみないとわからないことがたくさんあって、戸惑うことも多々ありましたが、周辺の環境も移住してきた当初とは比べものにならないほど様変わりしました。都心からお客さんが来る素敵な店もあるし、移住してくる人が増え、話の合うアーティストの友人もできて、とても居心地がよくなりました。ここに住まなければ陶芸をやることもなかったので、この家がいろいろな出会いを運んでくれた人生の分岐点になったと思います」

海岸や林を散歩し、自然にインスピレーションを得て作品をつくり、夜は満天の星を眺めて過ごす小前さんの日常。

「素のままでいられる大好きな家。住まいのかたちは変化していくものだから、楽しみつつ大事に住み続けたいですね」

いかにもキッチンです、という雰囲気にしたくなくて」と部屋になじむキッチンを大工さんに作ってもらった。

母家の隣には窯を設置した小さなアトリエが。10年ほど前、移住仲間が古材を使って建ててくれたそう。

PROFILE

小前洋子/こまえ・ようこ

〈ヨーガンレール〉を経て、アクセサリーと布雑貨のブランド「アンジンクチン」を友人と立ち上げる。移住先で陶芸に誘われたことがきっかけで造形作家に。

『クウネル』2024年7月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/矢沢美香

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『クウネル』NO.127掲載

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  • 発売日 : 2024年5月20日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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