花の都・東京への憧れは今も…島田順子さんに聞いた「私の好きな東京」(前編)

「私の好きな東京」を著名人がナビゲート。年2回の展示会の時期にフランスから一時帰国するというファッションデザイナー・島田順子さんが、海外に住んでいるからこそ思い出す東京の好きな場所、行きたい店を教えてくれました。

後編はこちら

ジャケット(JUNKO SHIMADAのアーカイブ)、ストールは私物

25歳で日本を離れ、パリでファッションデザイナーのキャリアをスタートさせて以来、60年近くをフランスで暮らしている島田順子さん。

「フランスでは移民が多く、祖国を追われ帰る国のない彼らの悲しい現実を目の当たりにします。帰れる国がある私は、どんなに長く住んでいてもフランスでは客人なのだ」と思い知らされて、日本への想いが一段と募るそうです。

そして、千葉県の館山で生まれ育った島田さんにとって東京は、 「子どもの頃は、汽車で4時間以上かけて上京し、有楽町で宝塚歌劇を観て、銀座で買い物をして夜の汽車に乗って帰る──そんな憧れの場所でした」。

18歳から渡仏するまでの7年間を過ごし、その後も帰国時に滞在する自宅は東京ですが、「東京人じゃない」からこそ、東京への憧れは、ずっとあるといいます。

「だいぶ前に、ふとしたきっかけで聴いた、日本の『とんぼ』という歌。悲しくて苦しいけれど東京が大好き、という切ないあの気持ち、よくわかる気がします」

では、最近の東京については?

「好きも嫌いもありますが、好きなのは、お店も人もていねいで、細部まで気がついて、優しい心遣いを感じられることね。帰国したら心を込めて作られる和食を食べたいし、日本的な佇まいの場所に心惹かれます。鳥栄や望洋楼は、そんな望みをかなえてくれるお店です」

『鳥栄』(湯島)…心のこもった鳥鍋が素晴らしい、亡き夫と通った思い出の店。

明治42年創業の鳥鍋の店。「東京の好きなところで真っ先に思い浮かびます。夫と一緒に夏でも冬でも、しょっちゅう行きました。味はもちろんですが、大きなまな板の上で鶏肉をたたく音や、先代の女将さんが急勾配の階段で料理を運んでくださる姿が印象に残っています」

鳥栄

住:台東区池之端1-2-1
営:18:00~21:00
休:日曜、第1・3月曜、祝 ※要予約 カード不可
予約は奇数月の1日 8:00から(1日が定休日の場合は翌営業日)、翌々月からの2カ月分を受け付ける。

『ふくい、望洋楼』(表参道)…気取らない雰囲気なのに、料理は上質でおいしい。

青山のオフィス近くのふくい、望洋楼は福井の厳選食材を使用。

「だから魚がおいしいですよね。お刺身も。特に甘エビのかき揚げは最高。フランスでもあのかき揚げが食べたいと思い出します。でも自分では再現できないプロの味なんですね」。割烹スタイルで自由にオーダーできる気軽さも魅力。東京の仕事仲間や友人と訪れます。

創業百有余年の福井県の老舗旅館、望洋楼の料理を東京で味わえる店。甘エビのかき揚げ 1,650円。

福井県の三大酒蔵(黒龍酒造、加藤吉平商店、三宅彦右衛門酒造)と注目の若手(常山酒造)が造る日本酒。島田さんも日本酒を。

ふくい、望洋楼

住:港区南青山 5-4-41 グラッセリア青山 1F
営:ランチ11:00~15:00(L.O. 14:30)、ディナー17:00~21:30(L.O. 20:30)
休:火曜、水曜

PROFILE

島田順子/しまだ・じゅんこ

1941年千葉県館山生まれ。1966年からフランス在住。1981年からパリで「JUNKO SHIMADA」コレクションを発表。近著は『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』(マガジンハウス)。

『クウネル』2024年5月号掲載 写真/松永 学(島田さん)、目黒智子、取材・文/黒澤弥生

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『クウネル』No.126掲載

私の好きな東京

  • 発売日 : 2024年3月29日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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