【70代エッセイスト・石黒智子さんのお宅訪問/後編】暮らしの達人の真似したくなる7つのアイデア

暮らし上手の石黒智子さんに、片づけの秘訣や、住まいを美しく整える民に心がけていることを教えていただきました。
前編/40年以上住む家はアップデートを重ねて進化中からの続きです。
常に暮らしを見つめ直して、創意工夫と更新を重ねる日々。

キッチンの反対側にあり、天井がガラス張りのサンル ームは明るく暖かく、趣味の植物を育てたり、テーブルを移動して針仕事をしたりする和みの場所。
70代になって、そろそろ“終活”ということを意識するようになったら、いままで見えてこなかったものが見えてきた、と石黒さんは言います。
【ミシン糸をコートかけに】

愛用する『イケア』のミシン用糸。使い終わっ たボビンの中央の穴に磁石を仕込んで鉄骨の柱につけたら、コート掛けの完成。「これは何かに使 えないだろうかといつも考えている」 石黒さんの創意工夫のなせるわざ。
「長年の慣れでやっていること、使い続けているものも多いけれど、これからはそれを見直して生活を作り直していくことも必要だと思います。長年生きてきたから古くなっていまは通用しない知識も多いです。頭はリセットしなくてはね。料理だって、便利な道具がどんどん出てきて、実は電子レンジのほうがおいしくできるレシピってたくさんあるんですよ」
【持ち物はセットにしてスタンバイ】

財布、レジ袋などポ ーチにまとめている買い物セット。うっかり忘れを防ぐために入れ替えなどは極力しない。
重いと感じる鍋やフライパン、来客用に多くの枚数を持っていた食器類は若い人に引き取ってもらう。うっかり忘れを防ぐために、日々の買い物に必要なこまごましたものはひとつのポーチに常にまとめておく。若いときとは違う、暮らしとの向き合い方です。

超シンプルなベッドルーム。カーテンは『イケア』で求めたリネンのカーテン生地を切って、レールにかけただけのもの。見た目もシンプルで美しく、洗って戻せばすぐ乾いていつも清潔。ベッドの周りや壁にあるのは夫婦も一人息子も大好きなドイツ製の電車模型やそのレールのコレクション。
【寝間着の定位置】

置き場所が定まりにくい寝間着はベッドの反対側にある手すりにかけておくだけ。見苦しさがない。
でも同時に、もののデザインやたたずまいなどの、納得のいくセンスや美しさを大切にするのは基本中の基本。だから多く使うマッチ箱のデザインが気に入らないと、自らプリントした紙でマッチを再包装したり、庭やサンルームで幼少時から大好きな草花を育て、押し花を作ることは何よりの楽しみなのです。
【タオル洗濯からの解放】

美しく無駄のない洗面所。手拭きは壁にとりつけたボックスに収納した紙のハンドタオルにして、 タオルの洗濯から解放された。
【トイレの臭い消し】

トイレを使った後の臭い消しにはマッチの燃えさしが有効。1本をしゅっと点火して、磁石で固定した金属の缶へ。(注・金属製の缶を固定するなど、火の後始末には注意が必要です)
【空き缶の使い道】

洗面所でも活躍する缶を利用した整頓。シュトーレンの缶には歯ブラシやひげそり道具のストックがちょうどよく収まった。
「ちょっと手をかけ、作り替えたりしながら、これから先の人生をきちんと暮らしていきたいと思っています」
PROFILE
石黒智子/いしぐろ・ともこ
エッセイスト
キッチン道具や器、生活雑貨の名品を数多く紹介。著書に『70歳からの軽やかな暮らし』(PHP研究所)、「60代シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)など。
『クウネル』2025年5月号掲載 写真/杉能信介、取材・文/船山直子