インスタフォロワー300万人以上!102歳で亡くなったファッショニスタ、アイリス・アプフェルを知ってる?
かっこいい大人たちの半生を追体験できるのが、ドキュメンタリー映画の魅力。肉声のメッセージやリアルな生き様から、生きるヒントをもらいます。インスタグラムのフォロワーは300万人以上。類まれなセンスを持つ服飾コレクターとして、装うこと、自分らしさを貫くことの楽しさを世界に発信し続けた彼女の生き方とは?
「毎日無難なことを繰り返すくらいなら、いっそ何もしなきゃいい」
丸い黒縁メガネに白髪のショートヘア、ファッションに合わせた色鮮やかなリップがトレードマーク。彼女を一躍有名にしたのは、2005年にメトロポリタン美術館で開催された、個人コレクションの展示会。メゾンブランドのアーカイブから世界各地の民族衣装、ジャンクなコスチュームジュエリーなど、ジャンルレスなアイテムをミックスした独自のセンスが反響を呼びました。当時アイリスは84歳。「80代の新人」は、一体何者で、どんな人生を歩んできたのか。様々なメディアが彼女を取り上げるようになり、世界中から注目を集めます。
「ジャズのように即興であれこれ試すのが楽しいの」と語るアイリスのセンスは母親譲り。ルールはなく、直感に従うだけ。90代になってもファッションや買い物への情熱は衰えることはなく、掘り出し物を求め、時には車椅子でハーレムのマーケットに向かいます。
若くしてインテリアデザイナーとしての才能を開花させたアイリスは、夫のカールとテキスタイルの会社を立ち上げ、ホワイトハウスや美術館の装飾を手掛けるなど、ビジネスで大きな成功を収めます。洋服、ジュエリー、インテリア、アート。仕事の買い付けや旅先で訪れた世界各地の蚤の市やマーケットで、彼女のアンテナを刺激したものたちを集めてきたことで、膨大かつ独創的なコレクションは少しずつ作られてきたのです。
ファッショニスタとして有名になってからは、大学で客員教授を務めたりさまざまな企業とコラボするなど、ファッションの本質や楽しみを、若い世代へと伝えることにも尽力。好奇心とユーモアを忘れず、常にアップデートし続けてきた彼女は、100歳を前にコレクションの一部を手放すことを決意します。
「人は何も所有できない。すべて天から借りているだけ」「全部を手に入れることは無理だから、諦めることも時には必要」。物にも人にも愛着は持つけれど執着はしない。軽やかで鮮やかな生き方が、大切なことを教えてくれます。
history
1921 ニューヨーク市クイーンズ区のアストリア地区で誕生。両親は共にロシア系ユダヤ人。ブティックを営んでいた母の影響で幼少期からファッションに高い関心を持つ
1939 ニューヨーク大学に入学し美術史を専攻。その後ウィスコンシン大学のアートスクールに入学し、卒業後はWomen’s Wear Daily誌に就職。その後インテリアデザイナーに転身
1948 長年のビジネスパートナーとなるカール・アプフェルと結婚
1950 カールと共にテキスタイル会社「オールド・ワールド・ウィーヴァーズ」を設立。テキスタイルやインテリアのデザイナーとして才能を開花。ホワイトハウスでも仕事をするなど第一線で活躍
2005 メトロポリタン美術館のコスチュームインスティチュートで、長年にわたり収集してきた服とコスチュームジュエリーの展示会を開催。アメリカ最高齢のファッションアイコンとして注目を集める
2014 ドキュメンタリー映画『Iris(邦題:アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー)』が公開
2024 3月1日、フロリダ州パームスプリングの自宅で死去。享年102歳
アイリス・アプフェルに憧れている人
平松昭子/ひらまつあきこ
イラストレーター。40代でケイト・スペードの公式ブロガーになった際、若い世代の中で迷いもありましたが、90代で広告モデルを務めていたアイリスさんに勇気づけられました。劇中では、ファッションの歴史や知識を、学生たちに惜しみなく教えているシーンがかっこよかったです。
『クウネル』2024年11月号掲載 文/吾妻枝里子
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