人生は諦めるものでなく、つねに希望を持ち、前に進むもの。別離や失敗など、辛いことがあっても立ち向かい、50 代で新しい人生を歩み始めたマダムに、その心の持ち方を聞きました。
フランスのファッションブランド『ザディグ エ ヴォルテール』 のセールス責任者として世界中を駆け回るシャルロット・ヴォージェルさん。
「夫が若い恋人を作り、突然離婚を切り出されたんです。立て直しを試みたものの失敗し、結果5年間の離婚訴訟の末、48歳で離婚したんです」
夫は仕事の関係で平日は南仏で過ごし、週末だけパリで家族と過ごす生活。長年の週末婚のせいか、すれ違いが続き、溝ができてしまいました。
「別れを切り出されて仕事が手につかず、休職して子供と南仏に引っ越し、修復を試みたんですが、ダメでした。その時は6㎏痩せ、友人にも会わず、ひとりで南仏に引きこもりました」
ようやく立ち直ってパリに戻ると、今度は会社から「戻らなくていい」と解雇通告。でもそこでめげないのが、シャルロットさんの強みでした。
「結婚も失敗したうえに、仕事まで失うわけにはいかないと、オフィスの中に空いている部屋と机を見つけ、私はここまで仕事ができるんだと周りにアピールしていったんです。かなり無茶な行動ではありましたが、少しずつ理解を得て、解雇を免れました」
その後も努力を続け、今では〝ザディグの母〟と呼ばれ、ブランドになくてはならない存在になりました。
「独身になると、何人かの男性からアプローチがありましたが、誰かと一緒に生活するのは考えられなくて」
そうこうするうち、友人の誕生会で現在のパートナー、同じ年のステファンさんと出会ったのです。
「彼は時間をかけて私と向き合い、『きみが幸せでいられるよう、僕が面
倒を見てあげる』と言ってくれました」
同居を決意したものの、お互いの連れ子を合わせると8人の大家族。一時は大人数で暮らしましたが、子供たちが独立したことをきっかけに、半年前にふたりで住む家を購入したのです。
「彼は結婚しようと言ってくれますが、私は形式にはこだわりません。自立した自由な今の生活がいいなと思うんです。50 代で始まった更年期障害の辛さも彼が支えてくれ、心おだやかに過ごせています。今は仕事をしつつ、料理や庭いじり、孫も生まれて面倒をみたり。辛い時期もポジティブに捉え、がんばったので、最終的に人生が良い方向に向かったのではないかしら?」
シャルロット・ヴォージェルさん
Charlotte Vogele/Zadig&Voltaire セールスVMD 責任者。スウェーデン出身。フランス在住30年以上。現在の会社には11年間勤務。前夫との間に30、27、24歳の子供がいる。現在はパートナーとパリ郊外の庭付き一軒家に暮らす。Zadig&Voltaire セールスVMD 責任者
『ku:nel』2020年1月号掲載
写真 篠あゆみ/コーディネート 石坂紀子/文 今井恵