【快適なふたり暮らし/後編】ものを減らしてすっきり。夫婦の程よい距離感も生まれて。
家族の形の変化に合わせて、住まいや暮らし方をどうするかはマチュア世代の大関心事。特にふたり暮らしになって転換をうまく実行してきた棚橋真貴子さんに取材しました。
工夫して住み続けることが家への思いの表現にもなって。
廊下は家のほぼ中央に。真貴子さんが骨折したとき車いすで動いたらやはりとても便利だった。
家全体のものが減ったことは大きく、家内の循環は活発です。例えば寝室に隣接する納戸は夫専用クローゼットに。真貴子さんが今ドレッサーとして使うのは長女の学習机でした。長女の部屋は懐かしい写真などは残しながら荷物は整理、真貴子さんの洋服や乗馬用具を置いたりストレッチする部屋に切り替えました。
キッチンに隣接したユーティリティの掃除道具コーナー。
もとは次女が使っていた、ユーティリティの洗濯機からテラスへの導線にある部屋。洗濯物を取り込んだり雨の日は洗濯物を干し、ミシンなどを置いて家事室風にと多様に使用。
「この家が好きです。暮らしが変わっても飽きることなく快適に楽しく住めていて、家の包容力を感じます。建築家の田中さんには本当に感謝しかなくて」
現在は夫の仕事部屋として機能する6畳。障子に浮かぶ樹々の影さえも絵になる。デスクはリビングで使っていたテーブルの脚に接ぎ木をした。
建物の北の傾斜地は雑木林の表情を残す裏庭で暖炉用の薪も調達できる! 長男が昔拾って埋めたドングリが立派なコナラに育った姿も。餌を置いた籠にくるシジュウカラもかわいがっている。
多くの時間を過ごすキッチンでは、道具の置き場など日々の使い勝手を小さく確認&改良するのも楽しみなのだとか。
リビング横の仕切りの裏側も収納スペースになっている。きれいなクロスや桐の収納ボックスを並べ、活用をさらに模索中
「余裕をもって部屋を使えるようになって、さらにすっきりしっかり暮らしたいなと感じます。2人で過ごす時間が長くなって、お互いに気配は感じながらも気にならない距離を保てるのも嬉しいこと。元々のバリアフリーに加え今後は手すりをつけたりとか、年齢に合わせた工夫が必要かも。またいつも手入れを怠らず、この住み心地を大切にしていきたい」
トイレ&風呂はバリアフリー構造を強く取り入れる。豆砂利洗い出しの床の左官仕事もきれい。
ちょっとした空間も生かされている。洗面所横には浅い棚があり子どもたちの仲良し写真が。
設計時に田中さんに伝えた家に関する希望のなかに、建築家フランク・ロイド・ライトのことば『住む人に品格を与える家』というのがあったそう。「家を作り家に育てられている」という夫婦の思いに触れられた気がします。
建築家・田中さんがデザインした、ユニークな椅子が玄関に。1枚のベニヤ板から6脚の椅子ができるそう。
玄関のシューズ類などの収納の上には庭仕事で使うしょい子やトルコの弦楽器サズやアジア各地の編み笠などを。収納には、青森ヒバの六角柱の手すりも取り付けられていて頼りになる。
棚橋真貴子さん宅の間取り図。
1998年に完成。子ども部屋3つとLDK、主寝室というそれだけだとふつうに聞こえる構成の130平米。実は6畳のユニットを連ねた間取りになっているなど合理性が潜み奥が深い。
PROFILE
棚橋真貴子/たなはし・まきこ
主婦 63歳
大学を卒業、美術館勤務の後、結婚、1男2女を育てる。子育てが終わってからは乗馬やバレエを趣味としている。『クウネル』別冊でモデルを務めたことも。
『クウネル』2026年5月号掲載
写真/木寺紀雄、イラスト/丹下京子、取材・文/原 千香子
SHARE
『クウネル』NO.138掲載
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