【フランスの結婚事情】8歳年下のフランス人男性と結婚した日本人スタイリスト。夫は週に一回ブーケを贈る習慣が
25歳の年齢差があるフランス大統領夫妻の登場で世界を賑わせましたが、フランスでは夫は女性が年上のカップルが年々増えていると言われています。8歳の年齢差、国籍の違いを乗り越えて結婚した素敵な日本人スタイリスト・ジャーナリスト女性と会社員男性のカップルに、恋愛観・結婚観を聞きました。
過去に人気の高かった記事を再編集してお届けします。初出は2024年8月、内容は執筆時の状況です。
目 次
フィーリングがぴったり合えば、カップルの年の差は関係ない。
毎週日曜日、マルシェ帰りに夫妻で立ち寄る19区のフローリスト『Ko-Hana』前で。二人ともオーナーの道上恵子さんのセンスが好き。
パリで活躍するスタイリスト、ファッションジャーナリストであり、ライフスタイルブランド『LERET.H(ルレ・アッシュ)』を主宰するひろこ・鈴木・ルレさんと会社員のオリヴィエ・ルレさんカップル。8歳の年齢差のある2人が知り合ったのは2005年、モンマルトルのカフェでした。
「恋人と別れて落ち込んでいた私を心配して『独身の男女が出会えるカフェがあるから行ってみよう』と女友達が誘ってくれたのです」(ひろこさん)
第一印象はお互いに「興味深いけど、運命を感じるほどではない。もう少し会ってお互いを知りたいかな」程度。それから週に1度のデートを重ね、愛情を深めていったそう。「出会ってから1年後、彼が当時住んでいた8区のアパルトマンから11区の私のアパルトマンに引っ越してきました。結婚をしたのはその1年後の2007年。私が46歳の時です」(ひろこさん)
子どもは持たない、という選択をした2人。結婚自体は急いでいなかったものの、自然な流れで一緒に。「当時僕は38歳。それまで何人かの女性と付き合いましたが、結婚を考えたのは彼女が初めてでした」(オリヴィエさん)
自宅のあるモンマルトルは坂の多いエリア。「彼も私も散歩が大好き。坂道も階段も気にせず、どこまででも歩きます」(ひろこさん)
ひろこさんの長所は人好きでオープンなところ。フランスでの生活は大変なことも多いのに、自分を信じて前進する強さにも惹かれる、とオリヴィエさん。「2006年に彼女の両親に会いに、東京へ行きました。ご両親は、娘がフランス人と結婚するのに全く問題はない、と言ってくれたのです。彼女と同じく、とてもオープンな人たちで安心しました」(オリヴィエさん)
終始一緒に過ごすフランス人カップルとは異なり、2人は別々に過ごす時間も多いそうです。「彼も私も、1人で過ごす時間を大切にしています。そして我慢をせず、私らしく生きてほしい、というのが彼の考え。だから友達と急に夜ご飯を食べることになっても、快く送り出してくれます。彼は柔軟性があり、決して『ノン』と言わない。まずは試してみる。そんなところを心から尊敬しています」(ひろこさん)
年齢差なんて感じません!
8歳の年の差を感じたことは?と2人に聞くと、「ありません」ときっぱり。「私は彼の人生の先輩として、様々な局面でアドバイスをすることがあります。一方、彼は煩雑な書類の手続きなど、外国人の私を助けてくれるシーンが多い。お互いに足りないところを補い、助け合うことで、バランスを取っている、と感じます」(ひろこさん)
年齢差があるカップルの魅力について聞いたところ「年齢差は感じませんし、男女間において大切なのはフィーリングが合うかどうか。年齢は関係ないと思います。それに私たち、見た目は差がないとよく言われます。フランス人に比べて日本人は若く見えることが多いですし、西洋人は実年齢より上に見えるから」(ひろこさん)。
「僕も同意見。今まで年齢で付き合う相手を決めたことはありません」(オリヴィエさん)。
ある時ひろこさんに「若くてきれいなモデルとブリジット・マクロン大統領夫人、あなただったらどちらと出かけたい?」と聞かれた際、迷わずマクロン夫人と答えた、とオリヴィエさん。
「年を重ねた女性は内面が豊か。マクロン夫人とは会話が弾んで楽しいと思います。若い女性はきれいですが、それは表面的な美しさ。知性、感性、エネルギー、優しさ……。そんな魅力を持つ女性を美しい、と感じます」
カルチャーギャップは時々感じることがあるそう。
「好みの音楽や映画が全て合うというわけではありません。映画なら私はマイナーなカルトムービーやヌーヴェル・ヴァーグが好みで、彼は1960~80年代のフランスのヒューマン映画が好き。今まで知らなかったジャンルの映画や音楽を、お互いに発見していくのは面白いな、と思います」(ひろこさん)
育った環境も年齢も異なるから、努力を重ねて仲良くできる。
近所に立つアンヴェールのマルシェは毎週金曜日、15時~20時30分まで営業。「仕事帰りに待ち合わせて食材を買い、近くのカフェでアペリティフをします」(ひろこさん)。
家事の役割について聞いたところ、料理は主にひろこさん、整理整頓はオリヴィエさんが担当。得意分野で分担をしています。「彼女はとても料理上手。健康を配慮しながら、マルシェで買った旬野菜をたくさん使ったご飯を作ります。作り置きのものを買ってきて、食べることはほぼありません。仕事が忙しいのに、料理は手を抜かない。そんな彼女と一緒になれて、本当にラッキーです」(オリヴィエさん)
平日はお互いに多忙で、夕食を一緒にとれない日も多い。だから週末はできるだけ、2人で過ごすように心がけます。「午前中はマルシェで買い物をし、映画を見て、カフェのテラスでのんびり過ごします。通り過ぎる人を眺めながら、あの人はこんな職業で、こんな生活をしていて……。と想像を膨らませるのも楽しいですね。歩くのが好きで、散歩は共通の趣味。移動手段がバスかタクシーか徒歩、という場合は必ず歩きを選びます」(ひろこさん)
時々けんかしても、長引かず仲直りは早いそう。「育った環境も、性格も年齢も違う。違うからこそ、お互いに努力をしようと意識し、仲良くできるのだと思います」(オリヴィエさん)
週に一回、19区のフローリスト『Ko-Hana』でブーケを買って妻に贈るのが習慣。
彼女のアドバイスで彼はどんどんセンスアップ!
雑誌の街角スナップにも登場したことがあるほど、おしゃれなオリヴィエさん。ひろこさんと出会った頃の、休日スタイルはイマイチだったそう。
「それまではビジネスシーン優先だったようで、とにかくカジュアルな装いが苦手。帽子にレザーコートなど難しいスタイリングで現れて驚いたことも」。ひろこさんはそんな彼に、少しずつお洒落のコツを伝授しました。
「スウェーデンではアクネのシャツ、ロンドンではジョン・スメドレーのニットをプレゼントし、シンプルが一番、とアドバイスをし続けました。彼はもともと柔軟な人ですから、素直に私の意見を聞き、まるで乾いたスポンジが水を吸収するようにセンスを磨いていきました」
お揃いのシャツは『マディソンブルー』。
旅先では、ひろこさんからオリヴィエさんに帽子をプレゼントするのが恒例に。「旅は共通の趣味。夏のバカンス(長期休暇)は必ずとります。忙しくてすれ違いの日々が続いても、旅の間にたくさん話して、歩いて、おいしいものを食べればすぐに関係をリセットできます。バカンスは人生の喜びや、楽しみを共有できる、2人の大切な時間です」(ひろこさん)
将来は彼の実家があるノルマンディで暮らすか、日本に家を買って暮らすのもいいな、とひろこさんとオリヴィエさん。まだ現役で働く2人が引退するのは、もう少し先になりそうです。
ひろこさんが夫にプレゼントした帽子。左からロンドン、シェルブール、東京で購入。
PROFILE
ひろこ・鈴木・ルレ/Hiroko Suzuki Leret
東京生まれ。スタイリストとして活動後、1991年渡仏。スイスで仏語を学び、パリでスタイリスト、ジャーナリストとして活動。ライフスタイルブランド『LERET.H』を主宰。instagram: @lereth_paris
オリヴィエ・ルレ/Olivier Leret
ノルマンディ生まれ。パリの高等教育機関、ESCE(インターナショナルビジネススクール)で国際経営学を学び、在学中にインターンを経験した会社に就職。国際的に活躍するビジネスマン。
『クウネル』2024年9月号掲載 写真/篠 あゆみ、取材・文/木戸美由紀、編集/吾妻枝里子
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『クウネル』NO.128掲載
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