【歴代朝ドラヒロインに注目1】『カーネーション』小原糸子 男性に頼らず自分の力で生きていく
連続テレビ小説「通称・朝ドラ」。録画や配信による視聴が当たり前になり、夜に朝ドラを見る人も増えた昨今。自分自身の人生や社会のあり方を考えるためのきっかけを朝ドラがもたらすことも。ヒロインたちの人生から朝ドラの魅力を探ります。フリーライターの木俣冬さんにおすすめを教えていただきました。
1961年放送の『娘と私』以来63年間、9月末に大団円を迎えた『虎に翼』まで110作を数えたNHK連続テレビ小説。通称・朝ドラについてのレビューを日々発信している木俣冬さんは「俯瞰して見ると、時代時代で人々が何を求めてきたのか、その変化がみられて面白いです」と言います。
朝ドラは明るく爽やかな主人公の成長というだけではなく、さまざまな悩みや葛藤をより深く描くようになったようです。
小原糸子 /『カーネーション』(2011年度後期 放映)
大好きなだんじり祭りになぜ女の子は参加できないのか、幼少期に感じたそのくやしさが糸子の原点にあったのでは、と木俣さん。
コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコの三姉妹を育てた母・小篠綾子さんをモデルに、力強く人生を切り開いていくヒロインに共感の輪が広がりました。
主演の尾野真千子さんが演じた少女期から中年に至る主人公の人生も面白いものでしたが、振り返ると、糸子の晩年を描いた夏木マリさんのパートがしみじみよかったと木俣さん。
「男性に頼ることなく、自分の力で女性がいきいきと生きていくという物語が魅力的でしたが、やがて話は人が老いていくときにどう生きるか、というところに向かいます。 88歳になり病気で入院した夏木さん演じる糸子が、院内でファッションショーを実現する。最後まであきらめることなく、好きな服作りをよりどころに、自分にできることを発見していく。年を取ってもできることはあると信じて奮闘する糸子の姿に力づけられる思いです」
渡辺あやさんというすぐれた脚本家が描き出したひとりの女性の成長と老いの姿。9月23日からBS放送で始まるアンコール放送で、糸子の人生を再度目撃してみてください。
選んだ人
木俣 冬/きまた・ふゆ
フリーライター
著書に『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)、『ネットと朝ドラ』(blueprint) など。朝ドラのレビューは『CINEMAS+』で配信中。
『クウネル』2024年11月号掲載 イラスト/宇多川新聞、 取材・文 /船山直子