ウィリアム・モリスの壁紙が印象的。フランス人刺繍家が「私のフランス」をイメージして作った鎌倉の家。

日本に暮らすフランス人のインテリアを取材しました。刺繍作家の増井ジェラルディンさんが「私のフランス」をテーマに作り上げた家は細部まで美しく、ウィリアム・モリスの壁紙や、ウォールデコレーションが印象的です。
日本に住んでいても、気に入ったものだけで飾り、自分の美意識を貫く。

壁紙は『ウィリアム・モリス』。他には『アントワネット・ポワソン』の壁紙も。フランスで使用していたアンティークのソファは日本で張り替え。「新しいソファを買う方が安いけれど、息子たちの幼いときの思い出があるものだから、高くても張り替えました」。息子たちがつけた傷のあるテーブルはディノスのもの。「安価でも傷がいい味わいになるからスペシャルです」
好きなテイストが原動力になる、コージーな〝私の王国〟。

庭で摘んだあじさい、アナベルブロンをテーブルに飾り、鳥のさえずりを聞きながら、週末の朝はここでプチデジュネを。
日本人の夫と3人の息子と鎌倉に住む増井ジェラルディン(以下、ジジ)さん。パリで結婚し、18年前に家族で日本へ。再び3年間のパリ暮らしを経て、11年前にこの家を建てました。
「日本に住むことになったから、この家は〝私のフランス〟にしたい」と、ジジさんの好みを細部まで反映したインテリアに。そして、夫の部屋である和室と浴室だけは日本スタイルの家です。
「夫は壁紙を替えたことに1ヵ月も気がつかなかったくらい、インテリアに興味がない」のだそうです。一般的に、「自分がどう見えるかを気にして洋服とかに情熱をかけるけれど、私はそこには興味はなくて、家を自分の居心地がいい場所にするために情熱を注ぎたいんですね。そうすると、家族もそのベネフィットを受けられるし、友達もそれを楽しめる。洋服は自分だけしか心地よくないし、共有できないものだから」といいます。
「自分を木に例えると、フランスで育っていた木を日本に持ってきたときは、根がないから最初は安定しなかったけれど、家が自分の根になってくれるから今は頑張れている。強く丈夫に根を張って、花も咲き、ちゃんと生きていけるんです」
母国を離れて暮らすジジさんにとって、この家がかけがえのない居場所です。

高台に建つ瀟洒な洋館。山に面した庭には大きな桜の木、窓際には藤棚もあり、朝は室内に優しい光が入るという、ジジさん理想の環境。家の奥側には夫の趣味の山小屋風倉庫も。
調和するものだけを厳選する。
「家の中ではすべてが調和された状態に保ちたいので、プラスチック素材などの違和感のあるものは使わない。置かれたものにハーモニーがあれば、そこに馴染むから、散らかっているようには見えないでしょ。だから、子どもが使うコップも色や素材など細かいところまでこだわって、私が一緒に選びます」
PROFILE

増井ジェラルディン/Géraldine Masui
フランス・パリ出身。パリで出会った夫との結婚を機に日本へ。夫と、18歳を筆頭に3人の息子と鎌倉で暮らし、手刺繍による精緻な作品を制作している。NHK『しあわせ気分のフランス語』に出演。Instagram:@geraldineisaiamasui
『クウネル』2024年9月号掲載 写真/目黒智子、取材・文/黒澤弥生