ワクワクするインテリアや食卓を提案し続けているスタイリストの洲脇佑美さん。インテリアのプロの台所はさぞや素敵なことだろうと気になり、見せて頂くこととしました。
ガランとしたスタジオに椅子や机を運び、無機質なキッチンに道具や食材を並べ、その場所に生き生きとした「暮らしの風景」を生み出す。インテリアスタイリストの洲脇佑美さんの仕事です。とはいえ、ものを並べる作業は仕事のなかのほんの一部。大事なのはそこにいくまでの行程、もの選びです。インテリアショップを巡り、たくさんのものを見て、頭の中で「素敵なものリスト」を更新する日々。ではでは、もの探しのプロが、自分のために選ぶものは? 興味津々でご自宅を訪ねました。どこに目を向けても素敵なものが並ぶ心地の良い空間で、特に目を引いたのは台所の美しさ。
「台所道具が大好きなんです。機能がデザインにつながっているところに惹かれますね」
日々、素敵なものに出合うチャンスは多いけれど、ものの新陳代謝は意外に少なく、家に並ぶのは長年連れ添っているものばかりだといいます。
「インテリアの世界にもファッションのようにトレンドは あるんです。でもうちにあるのは、ごく定番のもの中心。定番ゆえにどんなアイテムともなじみがいいですし、やはり飽きがこないから、どんどん買い足すこともありません」
最近、気づいたことがもうひとつ。それは「名品、名作に間違いなし」ということ。「身もふたもない話ですが」と笑います。
たとえば、北欧家具の巨匠と呼ばれるハンス・J・ウェグナー。彼のダイニングテーブルを昨年、思い切って買った洲脇さん。今でも見るたび、席に着くたびに惚れ惚れしてしまうそう。
「デザインも使い勝手も抜群で、暮らしの質をあげてくれると実感しています。高価ではあったけれど、その金額を消費したのではなく、暮らしの財産に変換した感じと言いますか……」
台所道具も然り。単なる料理道具と考えず、暮らしを豊かにしてくれるも
ののひとつと考えて選びます。そうすると、自ずと長く使えるもの、見ていて気分があがる美しいものにたどり着くようです。
「棚にしまってしまう道具でも、扉を開けたとき〝わあ、かわいい〟と思えると、毎日が楽しくなりますよね?
洲脇佑美/すわきゆみ
大阪芸術大学空間デザインコース卒業。インテリアショップの店長を務めた後、インテリアスタイリストに。雑誌・カタログ・広告等を手掛ける。http://www.suwakiyumi.com/
『ku:nel』2020年7月号掲載
写真 加藤新作 / 取材・文 鈴木麻子