本に囲まれて暮らす読書好きな方々が、今年刊行された書籍の中で最も心に響いたおすすめの1冊をピックアップ。それぞれの作品の魅力を語っていただきました。今の時代を写しとった文芸作品から、生き方や想いに共感した本、学びのための本まで。新たな出合いのきっかけに、ぜひ手にとってみてくだい。
近藤サト/こんどうさと
ナレーター
フジテレビのアナウンサーを経て、ナレーターとしても活躍。YouTubeで朗読をはじめ、着物の魅力についても配信。日本大学芸術学部特任教授。
時代を読み解くための優秀な〝レシピ本〟
平物語は源氏物語と比べて認知度が劣ります。そもそも2つを並べてみると似たようなタイトルの紛らわしさも手伝って、同一線上で比べてしまっている人も多いと思います。筆者はまず、その思い込みの呪縛を解いてくれます。平家物語は、貴族の平安時代と武士の鎌倉時代という2つの時代が交差。筆者が言うところの、歴史的に大きな変化を伴う「あわい」の時代が背景にあり、人の心や歴史を俯瞰した真理に満ちた物語です。
この本はいわば平家物語を味わうための〝レシピ本〟。料理の仕方でこんなにも美味しくなるのかと思うはず!実は私は安田登さんのツイートが好きで、そこから受ける印象は明るく物知りでだいぶお茶目な先生。難しいことを誰でもわかる言葉で説明してくれる名手です。平家物語にチャレンジしようとして挫折した方、教養として知っておきたい方にぜひおすすめ!
桐野夏生さんは、ファンというより同志のイメージ。読後はいつもそう思います。そして、どんな分厚い本もノンストップで読ませる技に毎回感嘆。『燕は戻ってこない』は、低賃金の非正規雇用に困窮する女性が、自由も尊厳も手放して代理母となる物語。私も妊娠や子育ての前線から離れつつある世代ですが、自分とは関係ないことと知りつつ我がことのようにのめり込んでしまうのは、もはや動物的本能としか言いようがありません。すべての世代の女性に読んでいただきたいです。
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