【8月】調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」

大沢さとりさん_歳時記8月お菓子

厳しい暑さもいくぶん和らぎ、今年は8/23に処暑を迎えました。クウネル・サロン プレミアムメンバーであり調香師の大沢さとりさんの習慣「朝の一服」では、夏の名残を惜しむような、涼やかで風情あるお菓子が並びます。

立秋から数えて、約15日ほど。二十四節気が、立秋から「処暑(しょしょ)」へ変わりました。「処」は、落ち着くという意味を持ち、厳しい暑さの峠を越した頃です。朝夕には涼しい風が吹きはじめ、いつの間にか、蝉の声は心地よい秋の虫の音色に変わります。
とはいえ、実際はまだもう少し夏の名残を感じる暑さが続き、不安定な気圧の影響で台風の心配も尽きない時季でもあります。自然の営みや恩恵に感謝しながら、体も心も、健やかに整えて過ごしたいですね。この季節のお菓子には、のど越しの良い葛餅などもおすすめです。


1.『とらや』葛製 花水仙饅

見た目にも涼しげな、とらやの季節限定菓子。「葛製の生地からほのかに透けて見えるのは、御膳餡と、赤い桔梗の羊羹です。この夏、使い納めの流水の平茶碗にて朝の一服でした」

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2.『とらや』金魚の錦玉

水面に浮かぶ青葉の蔭を金魚が泳ぐさまを表した、とらやの季節限定菓子。「自由に泳ぐ金魚には、ハワイの夏茶碗を合わせました」。

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3.『御菓子司 塩野』蚊やり薯蕷饅頭

蚊やりを模した夏らしいユーモラスな薯蕷饅頭(じょうまんじゅう)は、さとりさんが贔屓にする塩野にて。大樋焼の虎の茶碗と、蚊やりそっくりな「蓋置」(釜の蓋や柄杓を置くための茶道具)とともに。

豚の中身は、なめらかなこしあん。

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4. 『御菓子司 塩野』半生菓子の詰め合わせ

こちらも塩野さんの季節の逸品。スイカやなすび、とうきびなど、夏らしいモチーフのお干菓子が10種、宝箱のようにぎゅっと詰まっている。

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5. 『根岸 芋坂 羽二重団子』羽二重団子

1819年、東京・日暮里の地に創業した老舗菓子店。夏目漱石や正岡子規からも愛された羽二重団子は、こしあんと生醤油のつけ焼きの二種が定番。「日暮里に行くと、幼い頃、母に手を引かれ日本舞踊のお稽古に通っていたことを思い出します」

ひょうたんの茶入れは初秋らしい色合い。

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【今月のさとり花図鑑】
ひとつは、初夏から秋まで、長く紅い花を楽しませてくれる百日紅(さるすべり)。百日紅は遠目で見ることが多いせいか、花の印象は塊(かたまり)のようで花びらが何枚なのか、どこからどこまでがひとつの花なのか、判然としません。とくにこのフリフリが曲者で、ひとつのフリルが一輪なのかと思ってよく見れば、6枚の花びらが合わさって中央に長い蕊があることがわかります。
咲きはじめの頃はあまり匂いがないのですが、盛夏を迎えると赤い花は粉っぽく、甘い香りがします。さらに、9月には青くさい香りへと変わっていきます。多くの花がそうであるように、同じ品種の白花と赤花でも匂いは違います。朝と夕方、季節でも変化するようですし、個体差もあります。

ホテルオークラのお庭で撮影した一枚。百日紅の後ろに見えるのは、ヘリテージウイング(Helitage)。「いつも静かなこのお庭は、四季の花が咲いて、思索しながらゆっくり散歩できる場所です」。

夜になると葉が閉じ、眠っているように見えることからその名がついたとされる、ネム。

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また、もうひとつの夏の花は、ネム。ネムの花は、お花屋さんでは通常見かけません。山の谷沿いに生えていたり、植栽されている木も背が高いので、咲いている花を直接嗅ぐ機会はまれで、私も以前、この花の香りを作るために、まずは鉢植えを買って、観察するところから始めました。
ネムのちいさな拳骨のような蕾は、午後3時くらいから糸のような花びらをぴょんぴょんと伸ばし、夕方5時ころには化粧筆のように丸くなります。匂いは最初、まだ未熟な果実のような青い匂いから、じょじょにあま酸っぱいフルーティに変わり、やがてパウダリーになります。

花の香りは何日にも分けて、何回も確かめないと確かなところはわかりません。どんな花もそうですが、自分の思い込みをなくし、白紙の状態で香りを感じることが大切ですね。

2021年8月20日に限定発売された『パルファン・サトリ』四季のトライアルセットE「秋 – L’automne-」。ネム、ムスクブルー、ソネット、ミズナラ、ムラサキノウエという5種セットの香水は、しっとりした秋の夜長に最適。「ネムは、毎年夏になると香りをチェックして、都合3回の夏を経て、ようやく納得のいく香りが完成しました」

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