【フランス人のエスプリを育む読書】ギャラリー経営ロベルタ・モラン=コルヴォさんの想像を掻き立てる本

自宅書籍を背にしたロベルタ・モラン=コルヴォさん

読書や本を眺める時間をこよなく愛するフランス人。長期に休むバカンス先が、もっぱら最大の読書タイムのよう。本の世界で旅したり、他人の人生を生きたりと、おしゃれなフランス人も本の世界で想像を膨らませています。

イマジネーションを掻き立てる小説が好き

自宅書籍を背にしたロベルタ・モラン=コルヴォさん

毎晩「心おだやかに本の世界と向き合える時間だから」と、寝る前にベッドで本を読むロベルタ・モラン=コルヴォさん。夫婦揃って読書家で、ご自宅の本棚はご覧の通り圧巻です。アートギャラリーの経営者とあって、小説だけではなく、たくさんの写真集や画集も並んでいます。「夫や友人との会話の中で出てきた本や、新聞の書評欄で気になった本を買って読んでいます」

テーブルの上にマグカップと見開きの本にロベルタ・モラン=コルヴォさんの手が添えられている写真
好きな飲み物を用意して、心おだやかにページをめくる至福の時間が好き。
マグカッロベルタ・モラン=コルヴォさんのベッドサイドのブックタワーの写真
ベッドサイドには読みかけの本などを、スペースを使わずスタイリッシュに収納できるブックタワーに並べている。
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読者家のロベルタさんも小さい頃から本好きだったわけではなかったそう。「小学校時代は学校の先生や親、周りの大人から『本を読みなさい』と言われ続け、義務のように読んでいました。その頃は名作全集的なクラシックな内容の本ばかりでしたね」それが自ら「読みたい」と本を手に取り出したのは14歳の頃でした。

「カフカやヘルマン・ヘッセといった作家の本に出合い、70年代のリベラルな世界に憧れを抱いたんです」そこからずっと現在まで続く読書生活。ロベルタさんにとって本を読む時間とは、何を与えてくれているのでしょうか。

好きなジャンルはイマジネーションが膨らむ小説。「伝記、戦争もの、恋愛、政治といったテーマの本はあまり好きではありません」。とはいえ、あまりジャンルにこだわらず、興味がわいた本を購入している。

「違う世界やビジョンを見せてくれるし、日常と異なる世界に旅をさせてくれます。本を読んでいる間だけは、自分だけの特別な時間になるし。眠る前のひとときも素敵な読書タイムですが、列車や飛行機など、乗り物移動の時間のお供にも本が欠かせません。頭を空にして集中できる貴重な時間です」

香水ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント
18世紀のパリを舞台に、ずば抜けた嗅覚を持つ孤児が、やがて香水調香師に。しかしさらなる芳香を求めた末に、ある日処女の体臭に我を忘れ、この匂いを我が物にと望んだ末に……。全世界で1500万部を超える大ベストセラー。

今回お勧めしてくれたのは、イタリアで暮らしている頃に読んだ、18世紀のフランスを舞台にした『香水ある人殺しの物語』です。「まさに本ならではの想像を掻き立てられる一冊です。初めてパリの地に立ち、物語さながらにパリのさまざまな“匂い”を小説の中の“匂い”に重ねて歩いたことがとても印象的でした。パリに住むようになって改めて仏語訳で読みましたが、今度は原作(ドイツ語)にもチャレンジしてみようかな」

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹
日本版は新装版が新潮社から発売中(表紙は異なります)。2つの世界の物語が交互に展
開。老博士は計算士の「私」の無意識の核に、ある思考回路を埋め込む。やがて敵対する「組織」と「工場」の情報戦争に巻き込まれていく。

さらにロベルタさんは、日本の村上春樹の作品もお勧めしてくれました。「実はそんなに村上ファンではなかったんだけど、ベストセラー作家として気になる存在ではあったので『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を手にとって読んだところ、独特の世界観にあっという間に魅了されました」

そして新作を待ち望む作家を聞くと、「イタリア人のニコロ・アンマニーティ。彼の作品が大好きですべて読んでいます。ファンタジーとリアリティのミックスバランスがとても面白い。日本でも『孤独な天使たち』という作品が出ているはず。ぜひ読んでみて」

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/篠あゆみ、久々江満(本)コーディネート/石坂のりこ、鈴木ひろこ、文/今井恵

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